(2016年学校報より) 園芸療法課程(全寮制)修了後1年を経て

       
はじめに
 高校生の時、新聞記事で偶然目にした『淡路景観園芸学校』の記事。いつか行きたいな、という思いを持っており、関東から関西へUターンしてきたタイミングで思い切って、園芸療法課程全寮制へ入学しました。
 1年間に凝縮されたカリキュラムをこなしていく日々は、慌ただしくもありましたが学びの多いものでした。素晴らしい環境に囲まれ、授業で扱う植物のみならず、淡路島の豊かな自然からも多くのことを学び、自らの自然観を鍛えることができました。また、多くの方との出会いも、忘れることができません。

 

学びを活かす場所
 今は、生まれ育った地元にて、重度知的障がい者の方を支援する施設で働いています。開所してから50年余りという歴史ある施設の周囲には昔ながらの農村風景が広がっており、豊かな自然から季節を感じることができる場所です。 
施設には、入所されている方と通所されている方がおられます。私はここで、通所のユニットを担当しています。支援業務と併せて、園芸療法士として活動を提供し、利用者さんの日中活動の充実を図ることが、私の役目です。


身近にあるものを愉しむ
 
 利用者さんの暮らしのすぐそばには沢山の自然があり、その環境の素晴らしさを感じる反面、管理が追いつかない状況もありました。春はまだ良かったのですが、梅雨頃になると、植栽は一気にメヒシバに覆われてしまいました。
 このような状況をうけて、まずは身近にある植物を愉しむための環境整備から、利用者さんを巻き込みながら、ひっそりと作業を始めました。今は苑内の景観を育てるようなイメージを持ちながら、少しずつ活動を広げているところです。利用者さんからは、こんな花があったのか、こんなところから何かの芽がでてきているぞ、などと、コミュニケーションの中で季節の植物の話題がよく出ています。皆さんの特性を考慮して活動につなげていくよう心がけていますが、逆に利用者さんから温かく見守られているような場面も多く、一緒に活動しながら、日々学ばせて頂いているところです。


作業を工夫することの面白さ

 昨年の秋には、複数のユニットの利用者さんと職員さんが参加し、施設裏にある休耕田20枚余りに、レンゲの種まきをしました。作業依頼を受けた時には、すでにレンゲの播種時期を大幅に過ぎていたのですが、お預かりした大量の種を手にして悩んだ結果、『丈夫なビニール袋に種と川砂を入れてうどん生地を踏むようにして袋を踏む』 『ペットボトルに砂と種を入れマラカスのようにして振り振りする』という利用者さんの身体状態に合わせた工程を取り入れ(とても楽しい作業でした)、種子の表皮に傷つけ、吸水しやすくしてから播くことで、播き遅れをカバーしました。播く際には、バケツに種入りの砂を入れて、それぞれのペースで、『花咲か爺さん』のように播きました。今では散歩コースの脇で、レンゲがすくすくと育っています。
 卒後わずか1年を振り返るだけでも、あれやこれやと、お伝えしたいことが溢れてきます。
淡路での学びを振り返りながら、また更に知識を高めながら、そして職場での学びを活かしながら、愉しみながら。一歩一歩着実に取り組んでいければと考えています。 

PAGE TOP