フィンランドでの園芸療法の取り組みについて

フィンランドにおける園芸療法の取り組みを現地で調査研究してきました。報告いたします。(天野玉記)

フィンランドの北カレリア地方における園芸療法の取り組み

フィンランドでは、義務教育を卒業すると学問コースと実学コースに分かれます。

学問コースでは、大学・修士課程・博士課程と進みます。
実学コースでは、各種の専門学校があり、たとえば看護師になる人は看護師の専門学校に行き、国家資格を取るというコース設定になります。

仕事を始めてからさらにステップアップの勉強がしたい場合は、働きながら学べるステップアップの学校がたくさんあり、希望する人は働きながら学びます。

たとえば、看護師は専門学校卒業してなれますが、看護師専門学校卒業の給与は一律で決まっています。
そのため、ステップアップのために新しい学校に入学し、新しいスキルを学ぶという感じのようです。

セラピストになるためには、看護師など国家資格を持った人がセラピスト専門学校で数年学び、セラピストの資格を得て仕事に就くといった制度がありました。
私が出会ったセラピストの方々も経験豊富な元キャリアがあり、その経験に基づいた知識にセラピスト養成学校で学んだ知識を付加し、さらに臨床の経験を増やされてセラピストとして働いておられる方々ばかりでした。
そのため、セラピストの地位は高く、給与も保障されているようでした。

フィンランドのセラピストへのコース設定は、淡路景観園芸学校の制度と同じような位置付けであると思います。
フィンランドでは、すべての学校が公立で費用も無料のため、いつでも学びたいときに学べるようです。
日本にもこういう教育制度が定着すればいいのになぁと思いました。

フィンランドの北カレリア地方で、3種類の介護施設における園芸療法の取り組みや、セラピストの働き方を調査してきました。

1、特別養護老人ホームと精神疾患者用アパート(Outokumpu)
   ハンネレ・ニューッソネン(幸せの家)    
2、介護施設・病院・サービスホームの併設施設(Outokumpu)
   a) 介護施設: イルタルシコ
   b) 病院: ホペアクーシ
   c) サービスホーム: クントラ
3、ホテル併設健康リハビリセンター ( Ilomantsi)
   (滞在型リ介護施設:民間経営) 
   パースキュンペサ・イロマンチ

日本の施設に当てはめますと、
 1 は、ユニット型の特別養護老人ホーム
 2 は、
   a)病院併設の介護老人保健施設
   b)総合病院
   c)居宅サービス・デイケア・在宅サービスなど
 3 は、日本では無いように思われます

資料としてまとめましたので、下記のファイルをダウンロードしてみてください。

 

北カレリア地方の3種類の施設における園芸療法

フィンランドの北カレリア地方での森林療法

フィンランドでは、森林保全をするため国立公園がたくさんあり、森林資源を利用して病気を予防し健康を維持・増進する森林セラピーの考え方があります。
国立公園内で行われている森林散歩(森林セラピー)をご紹介します。

国立公園ペトケルヤルピにおける森林療法

北カレリア地方の生活

北カレリア地方は北極圏に近く、夏は白夜、冬は数時間で日が沈んでしまうような緯度の高い地方です。
その地方の人々がどのような生活をしておられるのかを調査してきました。
3軒の老夫婦(60~70歳代)の住む住宅を訪問しました。
また、地域のコミュニティである教会での取り組みも調査しました。

人々は、森の恵みを利用して自給自足生活を基本とした自然とともに暮らす生活をされていました。
隣に行くためには車で10分ほどかかるような点在した状態での生活のため、若い人はもちろん高齢者でも車を運転されていました。

健康維持のためにはサウナは欠かせないアイテムで、「サウナと松やにで治せない病気は死に至る」という諺があるほど、サウナと薬草などの自然の恵みを大切にして生活されています。
夏の間に森でキノコやベリーを収穫し、乾燥させたりジャムにしたりして貯え、サウナのために薪を貯え、森の恵みを最大限に利用した生活が古くから脈々と続き、森とともに生きる姿勢が感じられました。

しかし、高齢になり車が運転できなくなったり独居になったりした場合には、行政のサービスが入るようです。
介護タクシー・昼食サービス・訪問介護・訪問看護などがあるようで、重篤な状態になった場合は施設入所となります。しかし、基本的には家族介護が中心です。日本では家族介護に対して政府からの費用の補てんはありませんが、フィンランドでは家族が介護した場合、家族介護の負荷に見合った公的な費用補てん(家族介護手当)が支給されます。
フィンランドの法律では、高齢者は政府の責任で介護するとなっており、家族が介護する責任はありません。ですから、家族が介護した場合は家族にその費用が支払われる形になります。

資料をまとめましたので、ファイルをダウンロードしてください。

北カレリア地方の森と湖を利用した生活をご紹介します

フィンランドのオウトクンプの新聞に「日本からのお客様」と題して、介護施設訪問などをしたことが掲載されました。

新聞記事
新聞記事

 フィンランドに訪問し色々リサーチした内容が、オウトクンプの新聞に掲載されました。
記事は下記の内容です。日本に留学経験のある東フィンランド大学の学生に翻訳して頂きました。

新聞に掲載されている写真は見学をさせて頂いたお礼に、日本の折り紙(千代紙)で折り鶴の折り方をお教えしているところです。
色とりどりの日本の千代紙がとても気に入られて、喜んで下さいました。



日本からのお客様

研究者で、心理学者であり、さらに介護施設の元副施設長でもあった、天野玉記さんが神戸から真夏の日にオウトクンプを訪ねられました。園芸療法とお年寄りの生活に興味を持っておられたので、ご紹介しました。
天野さんは、オンニやヨキポフヤ介護施設を訪ね、介護施設での高齢者の生活を見学されました。
オンニ介護施設は園芸療法をある程度用いていました。患者さん達のお部屋には花が育ててあり、一階の患者は部屋から直接庭に出入りすることもできました。広い共有ポーチにはトマトや花などが植えてありました。町の中心地にあるにも関わらず、オンニは自然豊かな緑に囲まれています。園芸療法に大切なことは植物が生長していくのを見ること、自分で土に触れることや自然の様々な色や音を感じることです。オンニ介護施設の強みは園芸に興味を持つスタッフがいることです。
ヨキポフヤ介護施設では、介護士課長のマルヤ‐リーサ・ワーナネンさんを天野さんに紹介しました。課長は、そこで行われている様々な仕事のこと説明してくれました。ヨキポフヤで天野さんは患者さん達の色々なアクティビティーに驚いていました。彼女はバルコニーでベッドのまま外気浴していた95歳のお年寄りの明るさや、夏を楽しんでいる様子に感動していました。二人の間には共通の言葉がなかったのですが、言語の壁は問題ではありませんでした。暫くの間、とても楽しく一緒に自然を楽しめました。また、患者さん達のお部屋にはキレイなお花、明るい色の楽しいインテリアなどがありました。介護の様々なシステムも天野さんに、新しいアイデアを与えました。各ベッド上に完備された患者さんを持ち上げるためのリフトや、日常的に使われてるフィンランドのアラームシステムも日本で近い将来に用いられるのでしょう。日本のテクノロジーは発展していますが、フィンランドの技術が全部向こうで使われているとは限りません。天野さんにとって、介護施設にサウナがあるのも新しい経験でした。
オウトクンプは園芸療法の盛んな町です。またヨキポフヤの美術療法の工芸や作品も玉記さんのカメラの対象になりました。2つの施設を訪れた天野さんは、フィンランドの施設に満足していました。
さらに、2軒の個人の高齢者住宅を訪問しました。天野さんはフィンランド人の自然に囲まれた生活に憧れの気持ちでいっぱいでした。ここは日本に比べたら人口が少ない為、かなり広いところで住めます。


新聞記事(フィンランド語)

 

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