【第2回:景観園芸が意味するところ】

今回は学校の名称にもなっている‘景観’・‘園芸’が意味するところを紐といていきましょう。今回もやや内容が固いかもしれませんが、しばしお付き合いください。

 

景観は見た目のことではない

景観と聞いて、みなさんはどのような印象を持たれるでしょうか。良い景観と言えば、景色が美しくある、あるいは見た目が綺麗に飾り付けられているさま、ということかな?と思われる方が多いのではないでしょうか。

日本語の景観という言葉は、ドイツ語のラントシャフト(Landschaft)に由来し、単に「見た目の風景」だけを指すのではなく、「地域・area」つまり、土地のうえに人々が営みを展開し、それが一つの地域的なまとまりを形成したものを指します。一般的な景色とはずいぶんと意味合いが違うのがおわかりいただけるかなと思います。誤解が多いので、一時期には景域という言葉も使われたりもしましたが、あまり普及はしませんでしたね。



土地被覆や土地利用のあり方と言ったほうが正確かもしれず、例えば、景観生態学という学問分野がありますが、これは土地被覆の水平的配置と生態的な営みとの関係性を主に扱っており、生物の生息状況は、その場所の状態によってのみ規定されているわけではなく、周囲の状況が変化することによっても影響を受けるので、こうした空間的広がりをもった現象を扱う生態学ということで、景観生態学という名称がついているのです。

園芸:囲いのなかで心を耕す

一方、園芸は、もともと食糧や実用として栽培されていた植物を、次第に視覚や嗅覚の充足のため、つまり実用と食欲以外の人間の精神的欲求を満たすために栽培するようになったことが始まりとされています。


ここは、これを書いている私自身が専門分野外でして、あまり詳しいことが書けないのですが、園芸は英語でHorticultute、これは、Horti + Culture という由来、Hortiというのはホルタス(囲い)という意味でありますので、園芸はホルタスの中での心を耕すことと解釈できるようです。これ以上書くとボロがでますので、やめておきますが、心の充足感を満たすための文化行為を意味するということが理解できます。当校には園芸療法課程が設置されていますが、まさに、園芸の本来の意味合いを社会ニーズに基づいて実践していく人材養成を目指ざす課程であると言えるかと思います。


園芸植物を用いて生活空間をデザインする演習
学生の実習の場であるカラーガーデン
園芸療法ガーデン


景観園芸と実社会

ここまで来ると、なんとなく景観園芸が意味するところが、見た目を美しくしようとするものと大きく異なり、研究科のパンフや他の媒体に書かれてある、「地域の自然と風土に基づいたまちづくりをし、人々の暮らしを豊かにしようとする営みのこと」であることが、なんとなく理解いただけるのではないかと思います。第1回で書いたように、多様な専門分野の教員が必要なこともわかっていただけかなと。

実社会に目を転じてみますと、持続可能性が時代のキーワードになり、一般メディアでもSDGsなどの言葉をよく目にするようになりました。地域では人口減少に伴い、国土や環境の管理は一層困難になるなか、身近な緑や自然にも、都市の再構築・都市のブランド・地方創生・コミュニティ・健康福祉への貢献が求められ、まさに景観園芸を実務レベルで担える人の出番です。




次回は、景観園芸を実務レベルで担う人材を当研究科でどのように育成しようとしているのか、実際のカリキュラムや講義・演習などの様子を見ていきましょう。乞うご期待(^^)

 


当研究科を志望されているみなさまへ メッセージ
兵庫県 県土整備部参事兼公園緑地課長 戸田 克稔


兵庫県庁で、淡路景観園芸学校を所管しております、県土整備部参事兼公園緑地課長の戸田でございます。

新型コロナウイルス問題により、スッキリしない毎日を送られていることと思いますが、こんな時だからこそ、身近なところにある自然やみどり、花の癒やしの効果を、より強く実感しますね。

ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、最近、「バイオフィリックデザイン(Biophilic Design)」という言葉や「グリーンインフラ(Green Infra)」という言葉を目にする機会が増えてきているように思います。

「バイオフィリア(biophilia)」とは、「バイオ(bio=生物、自然)」という用語と「フィリア(philia=愛)」という用語を組み合わせた造語で、アメリカの生物学者エドワード.O.ウィルソンが1980年代に提唱した「人間には“自然とつながりたい”という本能的欲求がある」という仮説です。オフィス等の空間デザインに、自然を感じられる環境を上手く取り入れることで、「幸福度」や「生産性」、「創造性」の向上が期待できるとして、それらを「バイオフィリックデザイン」と呼び、今、欧米のみならず、我が国においても積極的に導入され始めています。アメリカのシアトル市にある「Amazon Spheres」が特に有名です。

また、「グリーンインフラ」は、「グリーン(green=緑)」という用語と「インフラストラクチャー( Infrastructure=社会基盤)」 を組み合わせた造語で、こちらも欧米が先行しており、アメリカでは雨水管理や水資源管理、ヨーロッパンでは生態系の多機能性とネットワーク性に重点をおいて取り組みが進められています。アメリカのポートランド市の取組みが特に有名です。

近年、我が国においても、「グリーンインフラ」への関心が益々高まってきており、最近の注目すべき動きとしては、国土交通省が「グリーンインフラ推進戦略」を令和元年7月に策定・公表したことが挙げられます。その中では、「グリーンインフラとは、社会資本整備や土地利用等のハード・ソフト両面において、自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくりを進める取組」とされています。加えて、令和2年3月に、グリーンインフラの社会実装を推進するために、「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」が新設されたことも注目に値します。

このように、我が国においても、今や、オフィス等の建築物の中や社会資本整備全般においても、自然環境が有する多様な機能を活かした様々な取組みを、官民連携により推進していこうという動きが活発になってきているため、それらを実践的に行える専門家へのニーズが今後益々高まっていくことが想定されます。

自然環境が有する多様な機能を活かした様々な取組みを、専門的かつ実践的に学べる場所・・・、そのふさわしい場所の一つが、まさに淡路景観園芸学校だと考えています。

新型コロナウイルス問題の解決が未だ見通せず、スッキリしない中でありますが、是非とも淡路景観園芸学校を受験候補として頂くとともに、受験に向けて、日々の勉学に励んで頂ければと思います。

来春、淡路景観園芸学校のキャンパスで、みなさまとお会いできる日を楽しみにしております。

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