兵庫県園芸療法士会設立10周年記念事業が2016年11月20日（日）に淡路夢舞台国際会議場で行われました。
兵庫県園芸療法士会は、兵庫県立淡路景観園芸学校園芸療法課程を修了した兵庫県知事認定の園芸療法士が所属する組織で、会員数は124名（2016年11月現在）です。
　当日は11名の来賓を迎え、ポスターセッション、ワークショップ、記念式典、講演会、懇親会が行われ、参加者は一般参加者を含め、総数120名になりました。

　ポスターセッションでは、医療・介護・福祉、保育、公園、震災支援、園芸療法普及・促進分野から園芸療法実践10例が報告され、兵庫県園芸療法士の活動が多方面に渡り、着実に行われていることが紹介されました。
　ワークショップでは、「花のお弁当箱づくり」を通し、園芸療法を知り、その効果を体験する機会が設けられました。29名の参加者の表情が次第にゆるみ、和んでいく様子から人と植物による園芸療法癒しの効果が伝わってきました。

　記念式典では、来賓祝辞、祝電披露に引き続き、岡野裕兵庫県園芸療法士会会長から12月より「兵庫県園芸療法士会」が「NPO法人　園芸療法と歩む会」として新たなスタートを切るとの発表がありました。

　続いて、柿木達也氏（兵庫県健康福祉部 参事、加東健康福祉事務所長）から「最新の認知症ケアと園芸療法の可能性」の講演がありました。柿木氏は、このテーマを考える時、地域包括支援ケアシステムの中の新オレンジプランの中でどう園芸療法を活用できるか考える必要があることを冒頭に述べられました。そして、長寿の時代となり認知症予防は認知症にならなくするのではなく、いろいろな予防策を組み合わせ、発症をなるべく遅らせることや発症しても早期から介入し進行を遅らせることであると強調されました。その点で園芸は種目が多く、拒否する人が少ない上、認知症予防になると言われる運動、社会参加の要素が含まれているため、園芸療法への期待が大きいと話されました。最後に、認知症を不幸と捉える時代は終わり、不便になっていっていることを周囲が理解し、その不便をそっとさりげなく、優しく応援し、地域でいつまでも暮らせるようにしていく時代であるとまとめられました。
　次に、「支援を必要とする人々のための植栽と管理」というテーマで、マーニ・バーンズ氏（デバ・デザインズ社社長、兵庫県立大学大学院緑環境景観マネジメント研究科客員教授）による講演が行われました（通訳：横田優子兵庫県園芸療法士会副会長）。ヒーリング・ガーデン（癒しの庭）は、美しさの提供だけでなく、休息を提供し、会話を促進し、記憶と情動をつなぐ役割を持っているが、園芸療法ガーデンには、それらに加えて、園芸療法目標をサポートし、集団活動の場を提供し、個別活動を促す役割が求められるとの説明がありました。いずれのガーデンにおいても、生命力が感じられるよう、植物が健全に育つことが重要であり、そのために考慮すべき日光・土壌・水の条件、生育環境に適した植物選びやデザインのポイントについてのアドバイスがありました。さらに、植物の選択に関しては、有毒植物についての注意やガーデン・ユーザーの特性を踏まえた配慮についても伺うことができました。最後には、メインテナンスがユーザーに及ぼす心理的影響やその重要性について触れられ、ユーザーの身体的・心理的ニーズに応えるガーデンづくりが大切であると締めくくられました。

　懇親会は、乾杯の後、来賓の方々からお祝いのメッセージがあり、なごやかな雰囲気で参加者の歓談が進みました。最後に園芸療法課程主任教員豊田先生から励ましの言葉があり、閉会となりました。

　当日は、記念冊子「兵庫県園芸療法士会　設立10年のあゆみ」と手づくりの押し花のしおりが参加者に配られ、会場ロビーには、ひょうご安全の日推進県民会議からの感謝状および第３回畑崎記念ファッショナブルエージング賞の賞状、祝電、新聞掲載記事が掲示されました。そして、兵庫県立淡路景観園芸学校園芸療法課程の在学生が制作した寄せ植え作品も飾られ、会場に彩りを添えていました。

　このように兵庫県園芸療法士会設立10周年記念事業は、終始なごやかな雰囲気で進み、参加者から温かな会であったとの感想が寄せられました。今回の記念事業は、各地の会員が一丸となり開催されましたが、今後は、「NPO法人　園芸療法と歩む会」として、より一層会員が協力し、新しい方々、団体とともに、時代のニーズに合わせた新たな挑戦をしていくことが期待されます。