見頃の植物

ヒガンバナ

写真:ヒガンバナ



学 名:Lycoris radiata
科 名:ヒガンバナ科
原産地:中国
生育場所:一般駐車場付近の道端


 季節は過ぎてしまいましたが、お庭で一際目立っていたので、ヒガンバナを紹介させていただきます。  夏の暑さが落ち着いて、朝晩が涼しくなってくる秋の到来を感じさせる花として、ヒガンバナは代表的ではないでしょうか。だいたい1日の最低気温が20℃以下になってくると、花が咲き始めるそうです。このため、春のサクラの桜前線は南から北に向かいますが、ヒガンバナの彼岸花前線(開花前線)は北から南下していきます。  田んぼの畦道によく咲いているヒガンバナですが、日陰にも強いため作物と競争することも少なく、日本列島に稲作が伝来したときに大陸から入ってから現代までずっと農村景観の秋に色を添えてきました。別名を「曼殊沙華」ともいい、山口百恵の歌でも有名ですが、今回はヒガンバナが彩る「田んぼ」をキーワードに名歌を紹介したいと思います。


言わずと知れた百人一首の1番目、 「秋の田の かりほのいほの とまをあらみ わが衣手は つゆにぬれつつ」

暗唱できる方も多いと思いますが、改めて意味をたどってみます。
「秋の田んぼのすみにある、そまつな仮小屋にいると、小屋を荒く覆った屋根のカヤやススキなどの草の隙間から、冷たい夜露が落ちてきて、着物の袖が濡れていくばかりである」 と、百人一首の中で唯一、農民の生活をよんだ歌になっています。
この歌は、「万葉集」から選ばれましたが作者が分からず、権中納言定家が「農民を思いやる天皇であってほしい」という願いから、百人一首選定時に天智天皇の歌としたといわれています。ヒガンバナが見つめてきた稲穂の景色がこの先も続くように、農を思いやる日本人でいたいものです。




 ここで一首、
そのものら 赤き衣を 濡れまとい 金色の野に 映え立つべし(詠み人:シラス)


<参考①百人一首大辞典/監修:吉海直人(あかね書房) p34
<参考②サクッ!と知りたい情報館 http://sakuoumi.com/ 2014年9月27日投稿記事