科研(基盤研究C) 園芸療法研究報告

~ガーデニングは繰り返し前頭極を活性化させるかもしれない~

10月12日,Journal of Behavioral and Brain Scienceに  “Gardening MayRepeatedly Activate the Frontal Pole”  “ガーデニングは繰り返し前頭極を活性化させるかもしれない” (著者:豊田正博・横田優子・Susan Rodiek) が掲載されました。
以下,概要をご紹介します。詳細は,Journal of Behavioral and Brain Scienceをご覧ください。OPEN ACCESS(ダウンロード無料)です。検索: jbbs Toyoda

【研究の背景】
加齢は認知機能に関与する前頭前野の機能を低下させます(Cherry ら, 1996)が,前頭前野のトレーニングは認知機能の回復に有効(Belleville ら, 2011)との報告もあります。米国やオーストラリアの研究では,ガーデニングによる認知症リスク軽減効果が報告されていますが,ガーデニングによる認知刺激も効果の一因とみられています(Jedrziewski ら,2010)。
筆者らは,FAB(前頭葉機能検査)の3 つの課題を用いた研究で,ガーデニングのように繰り返し動作を行う課題(運動計画課題:拳・手刀・平手の動作をくり返す)は,反応選択課題や反応抑制課題に比べて前頭前野(前頭極・前頭前野背外側部)の賦活が大きいこと(Toyoda ら,2016)や,ガーデニング課題はFAB の運動計画課題より前頭前野の賦活が大きいこと(Toyoda ら,2016)を報告してきました。
一方で,前頭前野の一部であり,前頭前野の先端部に位置する前頭極は一度学習すると賦活しないとの報告もあり(Strange ら, 2001),ガーデニングを繰り返し行なった場合に前頭極の賦活が維持するのかについて,今回の研究で検証しました。

【目的】
本研究では,高齢者にガーデニング課題(たねまき,かん水)を5 回(1回あたり,15 秒間「止め」の合図がかかるまで課題を遂行し,その後15 秒休みをとる)行っていただき,同じ作業を繰り返し行っても前頭極の賦活が維持されるか否かについて,脳血流(脳血流が多いほど測定部位が賦活していることを示す)を測定して検証しました。

【結果の概略】
本研究では,たねまき課題を繰り返し行っても前頭極すべての測定領域で賦活が低下しませんでした。
結果を分析すると・・・

①園芸作業の,目(視覚)と手(体性感覚)から入力される外部情報に注意を向けながら作業をする(外的思 考が起きている)という特徴が前頭極内側の賦活と関係していること。
②園芸作業は,“目と手の協調性”を必要とする作業であり,作業中,外部情報に基づく思考(外的思考)の他 に,両半球の前頭極外側部では外部情報とは独立した思考(内的思考)が起きていること。
③たねまき課題のように,作業工程数が多いと外的思考と内的思考が多岐にわたって繰り返されるが,このことと右半球前頭極外側部の賦活が関係すること。
④たねまき課題のように,作業中に注目すべき対象物の視覚的特徴が変化していくことと左半球前頭極外側部の賦活が関係すること。

がわかり,ガーデニング作業を続けることは,運動効果だけでなく,継続的に前頭極を含む前頭前野を刺激している可能性があることを明らかにしました。

科研費基盤研究C 園芸療法研究報告(PDF版)

 

(文責 豊田)

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