園芸療法課程通学制 「園芸療法実習Ⅱ報告会」が開催されました

 2019年6月9日(日)に、在校生や修了生を対象とした「園芸療法実習Ⅱ報告会」が、本校で開催されました。この報告会は、通学制2年目の4月から5月に4回行う「園芸療法実習Ⅱ」の実習内容をまとめ、発表するものです。

 「園芸療法実習Ⅱ」は、勤務している福祉施設、学校、ボランティアを行っている高齢者施設などで、対象者へ試行的に園芸療法プログラムを行い、対象者の健康上の課題面とプラス面を見つけます。そして、どのような園芸を行っていけば健康や生活の改善につながるか検討し、園芸療法の目標を立て、目標を達成するためのプログラムを計画するものです。今回の発表事例をいくつかご紹介します。

 

「グループホームに入居中のアルツハイマー型認知症高齢者に行った園芸療法初期評価」

アルツハイマー型認知症の87歳女性へ、試行園芸として、1回目「ハーブの手浴」、2回目「初夏の花の寄せ植え」、3回目「寄せ植えのかん水、切り花アレンジ」、4回目「花がら摘み・アサガオの種まき」を行った。

その結果、園芸経験があり、注意機能・手続き記憶が保持され、できることは自分でしたいというプラス面、日常生活でできないことが増えてきて不安になっている、他者交流や楽しみが減ってきている、自己有用感が低下しているという課題面がわかり、次の園芸療法目標を設定した。

長期目標:他者との交流を行いながら、いきいきと自分らしく生活することができる

短期目標:①園芸療法学生や他者との交流の中で認められる機会を持ち、自己有用感ができる

     ②園芸活動の中で手続き記憶を発揮する機会が持てる

園芸療法目標を達成するためのプログラムとして、アサガオの栽培管理(水やり、花がらつみなど)を継続的に行いながら、花壇の花で切り花アレンジ、押し花作りと押し花作品作りなどを単発活動で実施する計画である。 

「医療療養型病棟に入院する認知症高齢者に行った園芸療法の初期評価」

アルツハイマー型認知症やや高度、両下肢閉塞性動脈硬化症の89歳女性へ、試行園芸として、1回目「花や庭の写真を楽しむ」、2回目「ペットボトルを使った小さなブーケ風アレンジの制作」、3回目「パンジー・ビオラで押し花の制作」、4回目「押し花を使った貼り絵の制作」を行った。

その結果、園芸活動を行う手指の機能や感覚は保たれ、他者との交流がストレス軽減や精神的安定につながっているというプラス面、加齢による体力低下、両下肢閉塞性動脈硬化症による車椅子生活、認知症の進行に伴う意欲低下や不安感から食事量が減り活動性が低下、息子を亡くした寂しさ、入院による生活環境の変化という課題面がわかり、次の園芸療法目標を設定した。

長期目標:①植物や人との関わりを通して楽しみを得る

     ②不安が軽減し穏やかに入院生活を送ることができる

短期目標:①園芸活動時に楽しい時間を過す

     ②植物や他者とふれあうことで、快感情を得る

園芸療法目標を達成するためのプログラムとして、生花の香りや触感を楽しむ植物を使ったフラワーアレンジ、季節の植物の寄せ植えなどを、体調に応じて実施する計画である。 

「介護付有料老人ホームに入居する高次脳機能障害高齢者に行った園芸療法の初期評価」

くも膜下出血(60歳)後の高次脳機能障害がある78歳男性へ、試行園芸として、1回目「花と野菜のカタログ閲覧、散歩」、2回目「お花のお弁当箱作り」、3回目「押し花の本閲覧と押し花作り」、4回目「押し花を使ったシールとメッセージカード作成」を行った。

その結果、レクリエーション活動に拒否なく参加、他利用者と良好な関係を構築し、歌の時間に歌詞カードを配るなどの役割があるというプラス面、高次脳機能障害による注意障害、発症以降の記憶障害による帰宅願望という課題面がわかり、次の園芸療法目標を設定した。

長期目標:より一層の役割を創出し、不安や孤独感を軽減することで落ち着いて生活できる。

短期目標:①園芸活動により植物への愛着・安心を育み、日々の生活に楽しみが生まれる

     ②植物の栽培や管理をする中で、能動的に役割を果たすことができる

園芸療法目標を達成するためのプログラムとして、トマトの栽培管理を継続的に行いながら、フラワーアレンジ、押し花作成、押し花使用のクラフト、活動アルバム作成、お仕事カレンダー作成などを実施する計画である。

 7月から始まる「園芸療法実習Ⅲ」では、今回計画した園芸療法プログラムを実施し、園芸療法目標の達成度を評価していきます。この報告は、「園芸療法実習Ⅲ報告会」として、2020年1月19日(日)に淡路景観園芸学校で行われます。一般公開しますので、園芸療法を知りたい・学びたい、施設で園芸療法を導入したいという園芸療法に関心のある方はどうぞご参加ください。詳細は、別途ホームページにてお知らせします。

(文責 金子みどり) 

 

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