園芸療法実習Ⅱ報告会(全寮制)が開催されました

 2019年8月10日(土)に、在校生や修了生を対象とした「園芸療法実習Ⅱ報告会」が、本校で開催されました。この報告会は、全寮制課程の学生が7月に4回行う「園芸療法実習Ⅱ」の実習内容をまとめ、発表するものです。

 全寮制学生の「園芸療法実習Ⅱ」は、園芸療法課程修了生の兵庫県知事認定園芸療法士が勤務する施設で実施し、対象者へ試行的に園芸療法プログラムを行い、対象者の健康上のプラス面と課題面を見つけます。そして、どのような園芸を行っていけば健康や生活の維持・改善につながるか検討し、園芸療法の目標を立て、その目標を達成するためのプログラムを計画するものです。今回の発表事例をご紹介します。

 

 「ケアハウスからデイサービスに通う不安神経症の高齢者に行った園芸療法の初期評価」

精神不安定のため神経内科受診中の80歳代女性へ、試行園芸として、1回目「寄せ植えづくり」、2回目「花がら摘み、香りを楽しむ(手浴)」、3回目「花がら摘み、押し花のうちわづくり」を行った。

その結果、ケアハウス入居後淋しいと感じ情緒不安定な面が見られる、ケアハウスではすることがなく居室で横になって過ごすことが多い、現在の身体状況や生活が受け入れられない、運動量の低下から下肢の筋力低下という課題はあるが、園芸経験があり、維持されている身体機能が多い、頑張って筋力をつけたいという本人の思いがある、デイサービスには明るく意欲的な利用者や信頼を寄せる園芸療法士がいるというプラスがわかり、次の園芸療法目標を設定した。

長期目標(4か月)

あらたな生きがいのある生活が送れる

短期目標(1か月)

①植物や緑のある空間からの五感への刺激を通して、ストレスや不安の軽減を図る

②園芸活動を通して、他者との豊かな関係性を構築する

③園芸活動を通して、不安軽減のための心身機能の維持向上を図る

園芸療法目標を達成するためのプログラムとして、試行園芸で作製した寄せ植えの栽培管理、散歩、手浴を継続的に行い、ポプリや花の写真の作品づくりなどを単発活動で行う計画である。

 

「自立支援型デイサービスを利用する独居高齢者に行った園芸療法初期評価」

腰部脊柱管狭窄症、高血圧症、不眠の80歳代独居の女性へ、試行園芸として、1回目「夏の花苗をプランターに植付け」、2回目「夏花のフラワーアレンジメント」、3回目「夏の花で押し花を作ろう」を行った。

その結果、ADLや認知機能保持され、できることが多くある、独居を続けるためであれば積極的に活動に参加する意欲があるというプラスと、役割と有用感の喪失、独居生活困難につながる運動不足によるADL低下の危険性、さみしさによる意欲低下・他者交流の減少や不活発な生活による認知機能低下の危険性という課題がわかり、次の園芸療法目標を設定した。

長期目標(4ヶ月)

①積極的に体を動かすことで生活機能低下が予防され、自立した生活を長く送ることができる

②他者との関わりのなかで自分の役割を見つけ、自分らしく毎日を過ごすことができる

短期目標(1ヶ月)

①デイサービス利用時、園芸活動が日課となり、身体活動量が増加する(長期目標①に対して)

②園芸活動中、他者との交流機会のなかで、自己有用感を積み重ねることができる(長期目標②に対して)

園芸療法目標を達成するためのプログラムとして、デイサービス利用日の身体活動が1.5メッツになることを目指し、秋冬野菜や花の播種と栽培管理、野菜収穫、調理、花の寄せ植え、押し花クラフト、ハーブ手浴などを実施する計画である。 

 

「介護老人保健施設に入居する認知症のある高齢者に行った園芸療法の初期評価」

アルツハイマー型認知症(軽度)がある90歳代女性へ、試行園芸として、1回目「花のお弁当箱作り(園芸療法ガーデンの花を使用)」、2回目「野菜スタンプのはがき作り(学校の畑で栽培した野菜を使用)」を行った。

その結果、手先の器用さと積極性・集中力保持、花と触れあうことでのエピソード記憶想起、今後の人生をこの施設で過ごすことを受け入れるというプラスと、難聴のため他者とのコミュニケーションをとることが少ない、一日の大半を居室内で過ごすという課題がわかり、次の園芸療法目標を設定した。

長期目標(4ヶ月)

植物や他者との関わりから、いきいきと自分らしく生活することができる

短期目標(1ヶ月)

①園芸活動中に保持している機能を発揮し、自発的な行動がとれる

②植物や他者とのふれあいの中から、共感や交流を楽しむ

園芸療法目標を達成するためのプログラムとして、難聴に対するコミュニケーション手段としてビジュアルツールを利用しながら、フラワーアレンジメント、花の寄せ植えと管理、観葉植物の寄せ植えなどの継続活動と押し花作り、リース作りなどの単発活動を実施する計画である。

 

「通所リハビリテーションに通う身体疾患の多い高齢女性に行った園芸療法初期評価」

慢性心不全、慢性腎不全、腰椎圧迫骨折後の90歳代女性へ、試行園芸として、1回目「夏の花の寄せ植え作り」、2回目「トピアリー作り」、3回目「ガーデンの散歩・ハーブの手浴」を行った。

その結果、認知機能保持、手指の巧緻性高い、コミュニケーション能力良好というプラスと、自身の気持ちやストレスを話す人が周辺にいない、園芸活動を行いたいにもかかわらず自宅では転倒が不安で実施できないという課題がわかり、次の園芸療法目標を設定した。

長期目標(4ヶ月)

①毎日を穏やかに、他者と交流を持ち、趣味活動を行いながら生活を送ることができる

②自宅において植物の管理を楽しむことができる

短期目標(2ヶ月)

①園芸活動でゆっくりと話す時間が増えることで日ごろの思いについて話し、ストレスを軽減することができる

②デイケアにおいて植物の管理ができる

園芸療法目標を達成するためのプログラムとして、2名の小集団活動で冬野菜の栽培、花壇管理を行いながら、サシェ、リースの創作活動、多肉・観葉植物の寄せ植えなどを単発活動で実施する計画である。

緊張しながら、発表に臨む学生
実習先指導者から貴重なご意見をいただきました

 

 

 

 

 9月から始まる「園芸療法実習Ⅲ」では、今回計画した園芸療法プログラムを実施し、園芸療法目標の達成度を評価していきます。この報告は、全寮制、通学制合同「園芸療法実習Ⅲ報告会」として、2020年1月19日(日)に淡路景観園芸学校で行われます。一般公開しますので、園芸療法を知りたい・学びたい、施設で園芸療法を導入したいという園芸療法に関心のある方はご参加ください。詳細は、別途ホームページにてお知らせします。

 

(文責 金子)

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