豊田教員が認知症に対する園芸療法の活用について講演しました。

 平成27年11月4日、兵庫県立但馬長寿の郷で、高齢者施設に勤務する職員(介護士、作業療法士、生活相談員ら)の方がたを対象に、平成27年度介護予防研修(認知症リハビリテーション研修)が開かれ、豊田教員が「園芸療法の理論と実践」と題して講演と実習・ワークショップを行いました。
 講演では、園芸療法が、認知症の中核症状のうち、注意・記憶・見当識(時間)機能の維持・回復に効果的であること、不安・抑うつ・不眠・興奮・暴言・暴力などの周辺症状に対しても有効であることについて、海外・国内のエビデンスをもとに解説がありました。
 実習では、参加者が4、5名のグループに別れ、園芸療法プログラムの一つである「花のお弁当箱作り」を体験しました。これは普通の弁当箱にオアシスを入れて花やハーブを挿していくものです。花をつまむ、切る、挿すという単純な3工程によって20~30分で美しい作品が完成するため、認知症の方も楽しく行うことが可能です。参加者は、ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)という気持ちの変化を数値化する評価方法を使って、活動前後の自身の気持ちの改善を実感され、「早速、施設に帰って実施したい」との声が聞かれました。
 ワークショップは4、5名のグループに分かれて、「栽培活動実践の意味を考える」というテーマで行われました。参加者は、自分が勤務する施設の利用者について、認知症の程度や移動・歩行に関するADL(日常生活動作能力)をもとにグループ分けしました。そして、栽培活動を行うことで、1) 緑の空間を見てストレス軽減や運動機会増につながる人々、2) 花壇作りや作物の収穫など定期的な作業に参加して自己有用感やコミュニケーション能力の向上につながる人々、3)日常的な栽培管理に携わり、生きがい作りやADL維持、認知症予防につながる人々がうまれることなど、施設で植物を栽培することの意味について考え、といったアイデアを発表しました。「一年間栽培を続けることが難しければ、春や秋限定で、過度な負担が職員にかからない形で園芸を継続し、夏や冬は屋内でできることを行えばよいという話を先生から聞いて楽になった」といったご意見もありました。
 今年の但馬長寿の郷での講演は、昨年の一般市民を対象にした講演を受けて専門職の方を対象に行われたものです。「土に触れて行うだけが園芸療法かと思っていたけど、方法はたくさんある。できることから初めてみたい」というご意見や、「但馬長寿の郷としても、園芸療法の考え方が広がるように支援していきたい」といったご意見をいただきました。農業が基幹産業である但馬らしく、園芸を認知症予防に活用したいという施設が多く、今後、園芸療法が広がっていくことが期待されます。

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