この作品は兵庫県の国際交流記念事業として西オーストラリア州政府に寄贈した庭園です。計画地は緩やかな芝生地で、周囲にはレンガ造りの歴史的建造物が散在し、首相公邸、迎賓館、議事堂など州政府中枢機関が集まる好立地の場所にあたる一方、同エリアも屋外施設の整備に高さ1.4mの制限がかけられています。また、この地の地下水質も悪く、水やりが維持条件としての庭園にも不向きな場所になっています。この与条件下に生まれた設計コンセプトは、まず高度のある庭の形成に向かず、水平性を特化した庭景観の展開を方針とし、水平地盤に豊富な瓦パーツを巧みにかみ合わせて配置し、地べたレベルでの美しさを作り出すことにしました。次に、現地の水条件を配慮し、水やりに必要な植物配置を行わず、瓦、景石、砂利など要素を中心にシンプルな庭を構成し、枯山水的な庭景観を形成させました。
作庭においては芝生地の既存環境を大切にし、新しい庭をこの地に加えても既存空間から切り離すことのないよう、景石の配置などで既存環境との一体感を図り、庭を該当空間の一部として成立させました。中心エリアの設計においては、兵庫県下にある作庭に使えるものを最大限に生かし、力量感のある濃色自然石、繊細な曲線をもつ淡路瓦、浅色で透明感のある自然砂利を基本素材として取り込み、洗練した造形と素材表面の明暗のコントラストにより兵庫の陸と海、島と浜を象徴的に表現し、素材感にあふれた庭を形成させました。庭の主要部は楕円の形とし、明瞭な形をもって「記念性」を強調し、どんな方向からもバランスのよい庭景の鑑賞ができる配置構成を実現しました(担当:沈悦)。