震災支援 第2弾

岩手県震災支援のため、2011年11月1日から3日まで実施した支援活動についてご報告致します。

 

Ⅰ.震災支援の概要
岩手県における震災支援活動は3か所で行いました。活動内容は、震災支援者への園芸療法セッションと講義、岩手県盛岡市における震災支援活動メンバーとの打ち合わせ、北上市沿岸地域被災者支援プロジェクトチームでの研修会に参加し園芸療法の発表と今後の支援についての検討会を実施してきました。

<具体的な内容>
1、震災後のPTSD患者受け入れ病院における園芸療法研修
日時  11月1日 PM4:00~6:00 
場所  晴和病院(精神科)
対象者 病院スタッフ(看護師/臨床心理士/作業療法士など)・養護施設指導員・養護教員など
研修内容  園芸療法の体験と講義
  講師:上地あさひ・天野玉記
プログラム:ハーブの手浴(肘浴) 花のお弁当箱

(1)支援の目的:
花と緑を活用した園芸療法体験により、PTSD患者受け入れ病院および養護施設やその他の教育現場において、治療および教育のツールの一つとして園芸療法を活用して頂くための研修。

(2)研修内容:
即効性のある生の植物を使ったプログラムを実体験することで、園芸療法による治療の可能性を実感しやすいようにプログラムを組んだ。
ハーブの手浴は、直接香りの効果によるストレス緩和の実体験がしやすく、すぐに使えるプログラムである。また、肘浴をしながらバスタオルで覆うとお風呂に入っているかの様な心地よさがあり、治療前後のリラクセイションとして使えることも提案した。参加者は気持ちがいいと感想を述べ、手軽なストレスケア効果を実感した。
花のお弁当箱は、室内で行える楽しみながら個性を発揮できるプログラムで、花による形や色を形成する楽しさとグループ間での会話を楽しむ事ができる。
参加メンバーは、ハーブの手浴でリラックスし、花のお弁当箱で美しい花を使う事で創造の楽しさを味わい、仲間との会話も活発になった。すぐにでも使える治療方法やストレスケアの方法として認識し、好評であった。

暖かいお湯に手をつけるだけでなく、肘もつけると効果的です。
さらに、その上からすっぽりバスタオルを被るとお風呂に入っている気分が味わえます。




たくさんのお花の中から、贅沢に花だけちょん切ってお弁当箱にさす。快感です!
男性が夢中になって、個性豊かな作品を作成中。


芝人形つくりではお互いに表情を作りながら、笑いが出たり、真剣になりすぎ一同がシーンとなるような状態であった。しかし完成した作品はどれも素晴らしく独特の楽しいムードになった。出来上がったとき、ある班では「芝人形ファミリー」というように一列に並べて感想を言いあうなど、お互いの交流が十分に図れ、沿岸部の職員の中から笑顔があふれた。

2、岩手県警少年課の職員研修
日時 11月2日 PM3:00~5:00 
場所 岩手県警少年課
対象者 岩手県警察少年課補導員50名とスタッフ5名
研修内容 精神科医による講演後、園芸療法の体験と講義
  講師:天野玉記・上地あさひ
  プログラム:ハーブの手浴(肘浴)
        芝人形作り
(1)支援の目的:
岩手県警の沿岸部では津波により支署が流され、多くの犠牲者が出た。震災後沿岸部の少年課では多くの職員による子供の安否確認および被災地での支援活動を行い、職員は休みなく活動した。さらには同僚らの死に直面し疲弊した。そこで今回の研修会は年に1回の研修であり、沿岸部の職員が多くのストレスを抱える中で、これからも内陸部の職員との交流を図り、お互いに助け合える関係を作ることを目的にした。

(2)研修内容:
園芸療法が、誰とでもすぐに打ち解けリラックスでき、コミュニケーションを図ることのできることに着目し、職員の癒しと今後の社会性の構築と、非行少年および震災遺児などのケアに役立てるプログラムの提案を行った。
セッション中は、ハーブの手浴で始めたが、すぐに和やかなムードになった。(肘浴をしながらバスタオルをかぶせるととても気持ちがいいと好評

3、北上市沿岸地域被災者支援プロジェクトチームの研修会に参加し園芸療法の講演
日時  11月3日 PM6:00~8:00 
場所  きたかみ震災復興ステーション
参加者 いわてNPO-NETサポート 菊池広人氏ほか数名
北上市沿岸地域被災者支援プロジェクトチーム 小原学氏ほか数名
    弘前大学教育学部教授・副学部長 北原啓司教授 他学部生
    千葉大学工学部 鈴木雅之先生 他 院生
    名古屋大学大学院准教授 小松 尚先生
発表テーマ  仮設住宅におけるコミュニティー作りについて
発表者1:千葉大学工学部 鈴木雅之
発表者2:兵庫県立大学講師 天野玉記

1)発表の背景
大船渡市災害復興方針として、よりよい街つくりのためには、単に被災前の状態を回復する「復旧」ではなく、災害を契機に生活基盤や産業の在り方を見直しながら新たなエネルギーを生み出す「復興」の取り組みを積極的に推進する復興計画を基本方針とした。その支援の一環として、北上市が職員を大船渡の仮設住宅の支援員として送り、常時継続支援を行っている。その支援員が北上市支援復興ステーションに集結し、弘前大学の北原教授を中心に研修会行っているが、その第3回研修会の発表者として参加させていただいた。

2)研修会内容
第一発表者の千葉大学の鈴木先生は、高齢化が進む千葉の団地での生活を助けるためのNPOを立ち上げている。主に買い物の手伝いと古くなった団地の住宅改修を行うNPOである。そのNPOのノウハウを仮設住宅の買い物難民となりつつある被災者(特に高齢者)への支援のために、NPOによる息の長い支援を提案した。
第二発表者の天野は、仮設住宅において心のケア・PTSD予防・孤独死につながる引きこもり防止のため、コミュニティ作りが重要となってくる。阪神淡路大震災後、仮設住宅での孤独死は200人を超え、その後復興住宅おける孤独死も毎年50人以上発生し、15年間で震災後の孤独死は700人を超えた。特に中高年男性の孤独死が多かった。そこで、引きこもりがちな中高年男性へのアプローチとしても有効な、園芸の提案を行った。

3つの提案
1、仮設住宅自治体の幹部への園芸プログラムの提案
2、園芸療法セッションによる仲間つくり
3、食につながる野菜つくりなどの提案を行い、園芸作業による引きこもりの防止
<内容>
1、新しい自治機能の構築:仮設住宅では地域がばらばらとなり従来あった社会が分断された状態にある。そのため、各戸の住民同士の新たな助け合いの自治機能を回復することが不可欠と思われる。自治体幹部は、引きこもりアルコール依存になるような事がないよう、各戸に働きかけ、新しい社会構築に尽力する必要がある。園芸が提案できる例として、「各戸に家の中で栽培できる植物を配ったり、花壇や畑を仮設住宅周辺につくるなど」を園芸プログラムとしてを提案した。
2、園芸療法セッションの提案として、癒しと未来思考型の認知の変容への起爆剤となるプログラムを実施し、1回のセッションを行うだけで仲間としての認識が湧き、心地よい仲間作りのきっかけを作ることが可能である。さらに、声を掛け合いセッションの参加を促す事も仲間作りの一歩につながる。
3、親・妻を亡くし、食事を自ら作らなくてはならなくなった男性のために、男の料理教室などの呼びかけを行うことで、簡単な食事の準備ができるようにする。そして、その食材を栽培することで、自己有用感が生まれる。簡単な野菜作りを提案して仮設住宅の方々に栽培してもらうことで、毎日の水やり当番を初め色々な植物の命を感じる体験が得られる。

植物を育てることを社会つくりのきっかっけにしてもらえることができるのではないかと提案。暫定的な仮設であってもそこが第二の故郷となるような地域社会を作ることも可能であり、そのことにより震災後のPTSD、鬱、引きこもり、アルコール問題などに対応することができると考える。ハード面の仮設住宅だけでは生きていけない事を訴え、ソフト面での人の生きる社会を構築する必要があると提案。
阪神淡路大震災後、住む所だけ与えられてもそれだけでは生きて行く事はできない。生きる希望がないからだ、と言われた方とかつて出会った事があった。
岩手の風土にあった社会作りを構築する必要性を岩手に行くたびに感じている。

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