緑環境ユニバーサルデザインは【モノや空間】にあらず
ユニバーサルデザインと聞くと、目の前にある空間やモノを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかしながら、ほんの少し先進事例や海外へ目を転じてみると,ユニバーサルデザインは必ずしもそのような空間やモノではなく,すべての人の利用,あるいは参加を保障する多様で柔軟な創意工夫と理解することが妥当であることが分かります。
私はこのような緑環境のユニバーサルデザインを主な研究テーマとし、‘情報’や‘仕組み’に重点を置いて調査研究を行っています。
バリアフリー情報の中身を紐解いていくと
いわゆるバリアフリー情報の十分な提供が利用者の利便性向上に大きく貢献することは良く知られていますが、公開情報の中身を調べていくと面白いものが見えてきます。例えば、国内と米国とを比較してみると、国内では設備の有無情報が大半なのに対し、米国では野外活動に関するソフト情報が大変に充実しています(美濃 2006)。
また、バリアフリーと言えば移動のマイナス情報と捉えがちですが、障害当事者の方々にヒアリングをしてみると楽しみのプラス情報が重要視されています(美濃ら 2008)。このように、バリアフリー情報の中身やその理解は、いまの緑環境ユニバーサルデザインの現状を良く表しており、まだまだ再考の余地があると考えられます。
スパイラルアップ(継続的改善)に向けて
楽しむための創意工夫であるユニバーサルデザインは、現場におけるスパイラルアップ(継続的改善)が欠かせません。 そのため、調査研究のみならず、アドバイザや委員会メンバとして様々な取り組みの応援にもでかけています。
また、仲間と協力しながら専門家向け社会人セミナーの運営もしています。緑環境のユニバーサルデザインへの取り組みは多岐にわたり、研究者も少ないため、理解を得るのが難しい局面もありますが、今後とも現場とのやり取りをベースに根気強く研究活動を続けていければと考えています。
美濃 伸之 MINO Nobuyuki
1991年 神戸大学農学部卒、1991年 農林水産省入省 農業環境技術研究所研究員、1999年 農学博士(筑波大学)、2001年 姫路工業大学 講師 、2003年 姫路工業大学 助教授、2004年 兵庫県立大学 助教授、2008年 兵庫県立大学 教授、景観マネジメント部門、ランドスケープ・プランニング研究室、主任景観園芸専門員、兵庫県立大学大学院緑環境景観マネジメント研究科教授、緑環境評価論(1年,前期)、緑環境評価演習(1年,前期)、緑環境景観マネジメント企画演習(1年,後期,分担)、施策マネジメント実践演習(2年)