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景観デザイン部門 ランドスケープデザイン研究室ホームページ

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ランドスケープとの出会い

私は、当時まだ緑豊かだった中国の北京郊外で幼少期を過ごした。両親は大学で教鞭を執っており、そこは様々な大学が集まっているエリアで、植物園や演習林が身近にある環境で育った。自然とふれあう時間が多く、自然が好きになった。お絵描きも好きで、屋外で遊びながら地面にいろいろな絵を画く日々。ある日、通りかかった近所の画家がその“地上絵”をみて「君は才能があるなあ」と声をかけてくれた。数日後、その人の弟子になることに。「画家を目指そう」と、その頃は考えていた。

スケッチ(南あわじの路地裏)
スケッチ(郡上八幡の坂道)



転機は高校時代に訪れる。家に両親を訪ねてやって来た個性溢れる人から「君が自然と芸術の両方に興味あれば、ランドスケープの道へ行くべきだ」と言われた。これが私と「ランドスケープ」の「出会い」である。この話をしてくれた人はハーバード大学でも講義をしていたこともあるような、教育分野で世界に知られるすごい先生だったことを後で知った。その後、自身も北京林業大学へ進学し、その先生の研究室で学び、卒業研究は10ヘクタールの公園計画に取り組んだ。運良くその公園計画がクライアントに評価され、著作権をもったまま就職し、就職先で公園の実施設計を始めることになった。実施設計の作業と工事現場での打ち合わせをするうちに、理想を設計から現実に落していくことの大変さ、また図面に描かれた空間を現場で形にしていく難しさを体感し、ランドスケープにおける「場」の大切さや経験の重要さを改めて認識させられた。

ランドスケープデザインの仕事を始めて7年間、生まれつきの感性で何とか50余りのプロジェクトをやってきたが、「もう充電しないと次のレベルにいけない」と自覚し、弱みであった論理的思考を磨こうと、日本の大学院に入ることにした。在学中、熊谷洋一教授の下で学術論文の基本から学び、何とか期間内で研究成果を上げることができた。また、幸運なことにその研究成果で学会賞も受賞した。

学位取得後は、ランドスケープの現場に戻りたい気持ちが湧いてきて、東京にあるPREC研究所に就職し、首都圏の公園緑地設計の仕事に没頭する日々を送った。

 

1999年に実践教育を中心とした淡路景観園芸学校が創立され、実務と研究、両方の経験が生かせる場として惹かれ、そこで働けることになった。景観園芸学校では研究、設計の両方ができるほか、広大で自然豊かなフィールド、地域と密接した日々があり、ランドスケープの原点ともいえる「人」と「自然」の微妙な関係を肌で感じることができている。改めて感性が磨かれる機会となった。

設計から施工まで手掛けた作品のひとつ


今、ランドスケープデザインについて思うのは「場」と「時間」の大切さだ。

そもそもランドスケープデザインとは、ランド=土地、スケープ=風景、デザイン=形を決める、すなわち「大地の風景をつくること」である。その土地にある問題点を、様々な観点から見つめ、そのポテンシャルを引き出し、環境に良く、美しいものをつくること。風景づくりは同じものはなく、その実際の土地、空間にある要素、エネルギーに合うもの考え、それを現場の作業員とともにつくりあげていくことだ。

また、ランドスケープとの「出会い」から数十年、自然と芸術、科学と宗教、東洋と西洋など数多くのキーワードを深く考えるようになった。その中で人生は、時間のかたまりだと捉え始めている。
私たちがつくる場所は、そこを訪れた人が、人生という限られた“時間”の中で、大事なひとときを過ごすためのもの。だからこそ、その大事な“時間”を掛けたくなるような空間をつくりたい。空間のうしろには“時間の神様”がいるのではないかとも考えている。その「場」が持つ過去、その「場」をつくる現在、その「場」に集うであろう未来。空間が積み重ねてきた時間と積み重ねていくであろう時間に目を向けて、そこにいる“時間の神様”に喜んでもらえるように、ランドスケープをデザインするのだ。

ランドスケープのおかげで人生も豊かになった。ランドスケープはとても魅力的な道だ。これからも楽しく歩いていきたいと思っている。

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