竹田直樹 TAKEDA NAOKI 景観デザイン部門・准教授

 

三省地区風景画展

新潟県十日町市における風景画プロジェクト

 世界規模で見れば珍しいものとはいえないコニーデ火山である富士山、あまりに平凡な山といえるサンビクトワール山は、北斎やセザンヌが絵画に描くことにより有名になったのです。バルビゾン、タヒチ、東海道などの地域もそのような性質を持っていると考えてよいでしょう。尾瀬も明治時代に風景画に描かれることにより有名になりました。このように、風景画は、景観の価値を高める効果を持っているのです。
そこで、高度な少子高齢化と過疎化の進む中山間地域、新潟県十日町市の三省地区を対象地に設定し、三省地区をモチーフとする風景画を描くことにより、同地区にこれまでとは異なる景観的な価値の創造を試みました。


紙にアクリル絵具を用い、約60点の作品を制作し現地の廃校になった小学校に展示したのです。この「三省地区風景画展」は、越後妻有アートトリエンナーレ2009のひとこまになりました。同トリエンナーレには約2ヶ月の会期中、国内外から35万人の来場者があり、マスコミなどでも大きく紹介されました。三省地区の景観は、妻有地方の中では平凡なものであり特に珍しいものではないのですが、地域外から来た観客は、風景画を見ることにより、三省地区には美しい景観が広がっているのだと認識するようになりました。また、地元の住民にとって、身近な景観が絵画として描かれることは、大きな刺激であり、彼らのアイデンティティに触れるものであったといえます。
 さらに、十日町市には伝統的なものから発展した繊維産業があるのですが、そこで開発された布地に高精度なプリントを行うインクジェットプリンターのために、作品2点のデジタルデータを提供しました。それは、風呂敷として商品化され、地場産業の振興にも貢献したのです。

空き家活用型多自然居住空間整備支援事業

淡路島の空き家を舞台とした庭園プロジェクト

 高度な少子高齢化と過疎化が進行する淡路島では様々なタイプの空き家が目立つようになり、社会問題化しつつあります。そこで、このような空き家の有効活用を図ることにより、地域振興に貢献すると同時に、そこに庭園を制作し、景観形成に貢献しようと考えました。
主として4軒の空き家をフィールドとして設定し、空き家の改修を行い、庭園を制作しました。さらに、これらをアートイベントの会場などとして活用することにより、集客を図り、問題提起を行ったのです。
 このプロジェクトは2005年にアサヒビール(株)の助成を受け実施しました。マスコミなどに広く取り上げられ、全国から注目されるものとなり、兵庫県は、県土整備部まちづくり局都市政策課を所管として、このプロジェクトを「空き家活用型多自然居住空間整備支援事業」の第一号としての助成対象としました。

被爆キョウチトウの森プロジェクト

広島における被爆樹木のプロジェクト

1945年8月6日、原子爆弾の投下により広島の爆心地は焼け野原となりました。ところが、被爆した樹木の中には予想に反して蘇生したものがあり、それらは打ちひしがれた人々に生きる勇気と希望をもたらし、「被爆樹木」と呼ばれるようになり、広島に暮らす人々に今も愛されています。2007年に開催された「広島アートプロジェクト2007」に、「ヒロシマのために」と題する造形作品を出展しました。この作品は、6台の一輪車の上に6本の被爆キョウチクトウ2世の苗木を植栽したもので、旧日本銀行の中庭に展示されたのです。会期中、3回にわたり中心市街地をパレードするパフォーマンスを行いました。展覧会最終日のパフォーマンスでは、中区吉島地区が目的地となり、同地区の「ちびっこ広場」に到着後、作品を解体し、6本の被爆キョウチクトウの苗木のうち1本を同広場に植栽し、吉島地区町内会の主催による植樹祭を実施しました。その後、その苗木は地元住民により大切に育てられ愛されるようになり大きく成長します。2008年には吉島地区町内会の主催により剪定式が開催され、その剪定枝を淡路に持ち帰り、挿し木して増殖しました。
 そして、2010年に開催された「広島アートプロジェクト2010」に、「被爆キョウチトウの森プロジェクト」と題する作品を出展しました。この作品は、吉島地区の公民館の庭に小さなテントをたて、増殖した200本の被爆キョウチクトウを展示するものです。会期中、これらの被爆キョウチクトウは、それらを育てると約束してくれた人々に配布されました。

研究者プロフィール

竹田 直樹 TAKEDA Naoki

1961年 姫路市生まれ東京育ち、1984年 千葉大学園芸学部造園学科卒業、1992年 野外彫刻に関する論文で博士(学術)、(株)都市緑地研究所取締役東京事務所長を経て1999年より兵庫県立大学大学院緑環境景観マネジメント研究科准教授。ランドスケープデザインや環境芸術に関する科目を担当。沖縄県立芸術大学大学院非常勤講師。パブリックアートやアートプロジェクトに関わる学術研究や執筆のほか、植物・環境・風景などをテーマにした作品制作を行っている。<著書>日本のパブリックアート(誠文堂新光社)、日本の彫刻設置事業(公人の友社)、アートを開く(公人の友社)など<最近の展覧会>越後妻有アートトリエンナーレ2009、BIWAKOビエンナーレ2010、ヒロシマアートプロジェクト2010

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