研究科8期生　本多　裕紀さん

勤務先：株式会社フィールドフォー・デザインオフィス

Ｑ１：いまの仕事の概要や面白いところを教えてください。
　主にビルなどの建物の外構デザイン・設計をしています。土地の歴史や周辺環境を調査し、使い方を想定してコンセプト、ストーリーを組み立て、空間をデザインします。一つのプロジェクトは提案から竣工まで数年かかることが多く、その間の様々な検討で提案の形は少しずつ変わります。それでもお客様とプロジェクト関係者に提案が受け入れられ、それを最後まで守って、または育てて、コンセプト通りに完成し、想定していた通りに人々が利用している姿を見たときは、心の底からよかったと思います。

Ｑ２：進学しようと思ったきっかけは？
　美大の油画専攻を卒業してから、普通の仕事と並行して作家活動をしていましたが、数年続けたころにやはり人生の大半を占めてしまう仕事として、ものづくりがしたいと思いました。植物をモチーフとして、室内空間を構成するインスタレーションという作品を作っていましたが、次の展開を考えたとき屋外での植物の空間、造園をやりたいと考えました。油絵からインスタレーションと、様々な素材を用いて作品制作をしてきたため、材料特性の理解なくして制作は出来ないと感じていたので、一度専門的に学ぼうと考え、大学院への進学を決めました。淡路景観園芸学校を選んだ理由は社会人入学が多いことと、オープンキャンパスであまりに充実した設備、環境、そして景色の良さを目にし、感動したからです。

Ｑ３：学校ではどのようなことを学びましたか？
　授業は保全・活用・マネジメント、どれも出来るだけ取る様にしていました。結果的には保全の授業がとても印象に残っています。入学前は植物個体の形にしか興味がありませんでしたが、生物同士の関係性などに注目する生態学の面白さに気づきました。いろいろなところの森や草原を見に行き、その場でたくさんの知識をもらいました。今の業務はデザイン・設計ですが、提案事の根底はこの自然や生態系の知識がベースとなっています。また、100種の植物を採取して標本をつくるという課題がありました。大変でしたが楽しくなってやり切ってみると、身近な植物である雑草がかなりの部分外来種に置き換わってしまっていることを知り、衝撃を受けた経験でした。この経験から、植栽計画では基本的に自生種緑化を提案するようにしています。活用デザインの授業では、CADや3Dソフトなどの基本的操作を教えてもらい、今も普通に仕事で使っている基礎を学びました。

Ｑ４：学校の魅力はどんなところにありますか？
　24時間使えるスタジオ、図書館、寮など、充実した設備が揃っています。特に図書館ですが、造園関連の書籍があれほど揃った専門図書館は他ではまだ出会っていません。社会人学生でしたのでコスパはよく考えましたが、非常に優れていたと感じます。教えてくれる先生方は第一線の研究者でありながら、どなたも親切でフレンドリーで、熱い方々でした。専門職大学院であることから、研究というより実践的学びの大学院であり、第一線の研究者から手取り足取り基礎的教養から実践的応用までを2年間で学べる、素晴らしい学校だったと思います。なにより、淡路のキャンパスと、淡路島は、非常に美しいです。今は関東で仕事をしていますが、いつか転機があれば再度淡路島に戻り移住したいと考えるくらいに美しい環境でした。

Ｑ５：学校で学んだこと、経験したことのどんなことが今役立っていますか？
　学校では体系立てて造園・環境について教えてもらいました。今の仕事の基礎知識、考え方の方法論は淡路で学んだことがほとんどです。実際の業務上では、大小様々な問題・課題が起こります。その課題は自然科学、人文学、社会科学といった大きな学問分野のどれに属していて、答えがある課題なのかどうか、課題自体を整理して対応していますが、この方法論自体、淡路の特別講義で行われた京大・手塚先生の炭素循環の講義の際に教えて頂きました。また、先生方の研究者としての真摯な姿勢にも非常に影響を受けました。正しいことを伝えるために、不確実なことは言わないようにしているのがよく伝わってきていて、そのスタイルを真似て業務上で貫いています。

Ｑ６：受験生へ一言お願いします。
　自身が社会人からキャリアチェンジのために進学した人間ですのでそういった方々にお伝えしたいのは、興味がある方々は思いきって飛び込んでみることをお勧めします。現実に照らしてよく計画されるべきだと思いますが、私自身は28歳で淡路に入学しました。修了時は30歳です。その経験から言うと、入試は心配ありません。2年のキャリアブランクも問題ありません（大学院はキャリアブランクとならないと思います）。国の支援（職業訓練受講給付金）もあるのでお金もあまり心配いりません。学生生活は楽しいです。就職先も結構選択肢があります。とても楽しい2年でしたし、今は目指していたやりたいことが出来ていて、楽しく仕事しています。淡路景観園芸学校は社会人の入学にやさしいです。