研究科11期生 上田 和子さん

勤務先:株式会社 ネスタリゾート神戸 ランドスケープ課

 

Q1:いまの仕事の概要や面白いところを教えてください。
卒業後、ネスタリゾート神戸(就学前の職場)に復職し、パーク内の植物の植栽計画と維持管理をしています。ゲストの皆さんに楽しんでいただける要素を増やすため、自然や植物を使った提案・計画・実施を行っています。具体的に言いますと、イベントや季節に合った空間の創出やフォトスポット制作、花壇では自然な雰囲気を演出するため、宿根草やグラス類を多く取り入れた植栽に取り組んでいます。パーク内には同じ種類のものを多く植えるのではなく、多種多様な植物を植えることで、生物の多様性や共生に繋がるよう自然環境に配慮したローメンテナンスで持続可能な植栽を目指しています。また安全な運営を保持するため、危険木や支障木がないか常に注視し伐採の実施も行っています。ネスタリゾート神戸は「大自然の冒険テーマパーク」ですが、ネスタは向こう側にある本物の自然とゲストを繋げる場所。ゲストの皆さんが自然や植物を通して心豊かに笑顔になることが最大の喜びです。

 

Q2:進学しようと思ったきっかけは?
何をしたいか明確にできないまま、大学(文学部歴史学科)に進学し、住宅メーカーに就職しました。25歳で結婚・出産・子育てとなかなかパートの域を出る働き方はできませんでした。子育てが落ち着き、園芸店に勤め始め、多くの植物と接するなか、植物を育てること、美しい植栽、庭造りに興味が湧いてきました。そのタイミングでネスタリゾート神戸へ転職。当時ネスタにはフローラという花畑があったのですが、そこで私は維持管理の難しさ・知識の無さ・経験不足を痛感したのです。基礎から専門的に学びたい。そこで淡路景観園芸学校の門戸を叩きました。

 

Q3:学校ではどのようなことを学びましたか?
保全・活用デザイン・マネジメント、どの領域の授業も園芸を少ししか知らない私にとって新鮮で衝撃でした。様々な領域から学ぶことができ、考え方に広い視野が開かれました。それが現在の仕事のベースとなっています。入学してすぐに、身近な野草(雑草)を120種採取して、標本を作るという課題がありました。その時は課題を早く終わらせたくて、初夏には採取完了。秋の雑草は手つかずでした。しかし今なら、管理する上で雑草の名前を知ることはとても大切だと理解できます。相手を知るためにはまず植物名(学名)を知ること、それがとても重要だからです。野生種が園芸種の原点となっている場合もあり、生態系と人の営みには繋がりがあることも学びました。保全の授業は考えさせられることが多く、知らないことは罪だと気づかされました。自然の基盤の上に私たち人の営みがある。ぼんやりとしか理解できていなかった自然や植物の恩恵を認識できたのは、先生方のメッセージからでした。これからも自然への感謝を忘れないでいたいと思います。

 

Q4:学校の魅力はどんなところにありますか?
学内には、同学年の学生が机を並べて自主学習できるスタジオがあり、図書館、寮、畑、温室、実習花壇、多種多様な樹木、宿根草を主としたガーデンなど、学び・実践できる環境が整っています。学びのフィールドは淡路島のみならず、岡山・京都・高知と遠方へ赴くこともありました。指導者の先生方は自然や植物をこよなく愛する各専門のエキスパート。ユーモアと知見溢れる優しいお人柄の先生方ばかりでした。そして志を同じくする仲間たちは年齢も国籍も多様で、ともに学び、ともに助け合い、ともに成長することができました。このような学びの時間を人生の中で経験できたことが誇らしく、幸せだったと思います。

 

Q5:学校で学んだこと、経験したことのどんなことが今役立っていますか?
2年生では活用デザイン領域の鑑賞園芸研究室に在籍し、温暖地における宿根草ガーテンを制作しました。先生のご指導で知ったガーデン・ランドスケープデザイナーのピート・アウドルフ氏の映画『Five Seasons』は私にとって生涯忘れることのできない出会いとなりました。ピート・アウドルフ氏は植物のあらゆる姿に美しさや価値を見出し、花後のシードヘッドをも鑑賞対象としたガーデンデザインを実践されており、自然を見つめ、美意識を養うことの大切さを学びました。現在も自然のありのままの美しさに気づけるようなガーデンを追求しながら仕事をしております。また、園芸植物活用演習の授業では、自然や植物を生活に取り入れることが、私たちのライフスタイルに彩りを与え、心を豊かに幸福にすることを学び、仕事においても、ネスタ山の恵まれた植物資源を活用したリースなどの装飾や門松づくりを実施しています。

 

Q6:受験生へ一言お願いします。
48歳から植物のことを学びたいと思い、一念発起し進学しました。結果、ほんとにチャレンジし、学んで良かったです。私は自分が知らないという事を知らなかったのです。学ぶのに遅いということはありません。淡路景観園芸学校で学ぶためには淡路島での寮生活となるため、今までの生活が変わり不安に感じることもあるかと思います。ご家族の理解や協力が必要な方もいらっしゃるかと思います。それでも私は勇気を持って、飛び込んでみることをお勧めします。
受験生の皆様のご健闘を祈ります。

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