(2014年学校報より) 園芸療法課程(通学制)卒後1年を経て

はじめに
 早いもので園芸療法課程を修了して1年が経ちました。そして忘れることのできない、阪神淡路大震災から20年の年でもあります。大震災は、一瞬にして多くのものを奪い去り、その日を境に生活は激変し、価値観も変わりました。 
復興支援活動に疲れた日々、庭の草引きや記憶にない花を見つけたときの愛おしさや植物の命の営みの素晴らしさに気づきました。
植物に触れることで自分自身が癒された経験から、かねて希望していた園芸療法課程に通学制が出来、定年退職と同時に入学することができました。園芸療法課程での学びは援助職に共通する人と人をつなぐ支援について再考する良い機会となりました。また、植物の育成や環境について知識を得たことは、支援の幅が広がっただけでなく、老年期を控えた自分自身のくらしかたにも影響を受けたと思っています。

 

障がい者とともに働いて
 退職後は、今まで経験の少なかった障がい者の方を支援できる職場を希望し、知的障がい者を多数雇用している企業に就職することが出来ました。
園内清掃や除草作業を中心とした業務に就労している知的障がい者の方々への、相談援助職としての勤務が始まりました。障がい者の皆さん一人ひとりと話す機会を持つ中で、コミュニケーションは不十分だが、それぞれが話したいことを持っており、聞いてほしい、自分の言葉で伝えたいと思っているということを強く感じました。
勤務先の園芸療法実習では、体力低下している障がい者の方々を対象に取り組みましたが、全員が園芸作業に興味関心を持ち、とても楽しみにしており、積極的に取り組んでいる様子がみられました。また、体力低下していても環境や生活背景を考慮し、個々の特性に応じたやり方をすれば、園芸療法の視点を活かした就労支援もあるのではないかと思い始めました。
就労現場では、自らが育てたものを収穫する、利用する、提供するなど能動的活用ができることを目指しています。また、就労支援という限り継続的、組織的な活動に発展させることが大事ですが、折しも社内プロジェクトチームが動き始め、農業、加工、就労支援、総合生活支援に分かれ組織全体で動きだしており、その中で園芸療法の視点を提案していきたいと考えているものの植物の経験と知識不足は否めません。

 

グループホームでの支援から
 入社してから、グループホームの必要性を強く感じるようになり、わずか6名ですが、グループホーム運営にかかわり1年が経過しました。
グループホームは、生活の場として就労先では見られないそれぞれの生活の困りごとに出会うことになりました。一人ひとりが、自分の城をもち主体的に動ける生活の場では、自己主張や自己決定の出来る場となりつつあります。やってもらってばかりでなく、自分たちでできることはないかとの入居者から声があがりました。話し合いの結果、月1回日曜日に園芸療法士を招いて、食材購入から昼食を自分たちで作ることになりました。春になればプランターでの野菜づくりなどにも取り組む予定です。

 

これから  
 まだまだ引き出せていない能力や適切な職場提供となっていませんが、今後も障がい者のみなさんから学び、障がい者とともに老いて生きていきたいと願っています。

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