(2017年学校報より)園芸療法課程(通学制)を修了して

はじめに
 私と園芸療法の初めての出会いは大学の農学部に在学中の時でした。学校の図書館で園芸療法の文献を見つけ、そこから園芸療法を研究されている先生に出会い、お話を伺うとともに大学内の花壇管理などをご一緒するようになりました。卒業の時を迎え、もっと深く園芸療法について学びたいと思いながら兵庫県内の高校に農業教諭として就職しました。それからしばらく経ち、淡路景観園芸学校の豊田先生が、高校生心のサポート事業(不登校やいじめ等の未然防止を目的としたプログラム)の講師としてお見えになりました。その際に園芸療法に関する講義や実習「花のお弁当箱づくり」を受け、園芸療法を学びたいという意欲が再び湧き上がり、翌年同校の入学試験を受け、通学制学生として入学しました。

 

淡路景観園芸学校での2年間
 大学の時に園芸療法の文献を少し読んだだけの私にとって、学校での講義や実習はすべてが目新しく、そして異業種の同級生との交流は、学びの幅を広げてくれるものでした。
特に医学や福祉分野の知識に乏しかった私には、授業の中で行われるケーススタディ(様々な対象者を想定してどのような園芸療法プログラムが実施できるか)はとても難しく、想像もできないようなものでした。しかし、講義や実習を重ねるたびに、様々な考え方や園芸療法の可能性を知り、少しずつ自分の意見をまとめることができるようになりました。
 こうして迎えた2年目の実習。私は介護老人保健施設で2名の高齢者を対象に園芸療法プログラムを実施しました。対象になっていただいたお二人にとっては、私は孫のような年齢であり、頼りなく、不安に思うこともたくさんあっただろうと思います。しかし、そんな私を「先生、先生」と呼んでくださり、「今日はなにするんや。会えるのを楽しみにしてたよ」と暖かい言葉で迎えてくださいました。プログラムが進むとともに、お互いの信頼関係も構築されていき、最初は大変であった実習も実りある楽しいものに変化していきました。実習がすべて終わり、お二人にそのことを告げるときはとても辛かったのを今でも覚えています。しかし、この出会いは私の園芸療法士としての原点であり、かけがえのないものであるということを、何年たった今でも思います。
 淡路での学びは、大変なことも多かったですが、実りある2年間を与えてくれ、私の人生にも大きな変化をもたらしてくれました。

 

修了後の2年間
 園芸療法の基礎をしっかりと学び、様々な経験をさせていただいたことで、私は園芸療法の研究をしたい。豊田先生のような研究者になりたい。という目標を持ちました。そこで大学院進学を決め、「高齢者に園芸作業が与える身体負荷」について研究を行いました。この研究では、庭園の整備や対象者への接し方など淡路で学んだことが糧となりスムーズに研究も進み、無事に学位を取得することができました。その傍らで、農業高校生と地域の高齢者を園芸作業で結ぶことができないかと考え、施設等で園芸プログラムを行っていました。すべての実践において淡路での学びが活かされたと思っています。

 

園芸療法士としての役割
 淡路の修了生の皆さんは、様々な施設で園芸療法士として活躍され、その功績は枚挙に暇がないほどです。一方私は何か貢献できていることがあるのかな?と思うことが多々ありました。そんな時、ある高校生が「私も園芸療法士になりたい」と私に伝えてきました。その言葉を聞いた時、微々たる活動でしたが、高校生と共に行ってきたことが実を結んだなと思いました。これから先、園芸療法の研究を続けていきたいという思いは変わりませんが、不安になることも失敗することもあると思います。そんな時は、原点に立ちかえり、淡路で学んだことを思い出してみたいと思います。あの時の淡路との出会い、先生方との出会い、すべてに感謝です。

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