2022年6月12日(日)に「園芸療法実習Ⅱ報告会」が開催されました。昨年度はオンラインでの実施でしたが、今回は対面での報告会となりました。参加者は学校関係者に限定し、実習指導者(園芸療法課程修了生)、園芸療法課程在校生、教職員計21名が参加しました。
「園芸療法実習Ⅱ報告会」は、学生が「園芸療法実習Ⅱ」の実習内容をまとめ、発表するものです。実習では、通学制後期課程の学生が勤務している医療・福祉施設、ボランティアを行っている福祉施設、対象者の自宅などで対象者へ試行的に園芸療法プログラムを行い、対象者の健康上のプラス面と課題面を見つけます。そして、どのような園芸活動を行えば対象者の健康や生活の改善につながるか検討し、園芸療法の目標を立て、この目標を達成するためのプログラムを計画するものです。
今回の発表タイトルと内容をご紹介します。
1.デイサービスに通所の入退院の繰り返しで精神不安のある84歳女性に行った
園芸療法初期評価
癌や神経痛などで入退院を繰り返し、抑うつ的となっているデイサービスを利用する80代女性に対する試行園芸として、1回目「花の弁当箱作り」、2回目「ハーブを使った初夏の寄せ植え」、3回目「寄せ植えの管理・押し花作り」を行なった。生け花の経験があった対象者は、植物の手入れや植物を使った創作活動に対して関心が高く、楽しみを持って活動に参加することで不安やストレスの軽減へとつながる可能性があることが分かり、次の園芸療法目標を設定した。
長期目標(4ヶ月)
デイサービスでの楽しみや役割を得ることで不安や緊張が軽減し、生き生きとした生活ができる
短期目標(2ヶ月)
①定期的な栽培や創作活動を通し、他者と喜びや達成感を共有する機会が持てる
②経験を伝える機会や手続き記憶を発揮する機会を通し、自己肯定感や満足感を得る
身体機能維持のため寄せ植えの管理や野菜栽培なども取り入れつつ、押し花やフラワーアレンジなど対象者が好む創作活動を中心とした園芸療法プログラムとする計画である。
2.介護付き有料老人ホーム入居の意欲低下が見られる高齢者に行った園芸療法
初期評価
有料老人ホームに入居する90歳代の認知機能低下・大腿骨頸部骨折による歩行機能障害がある女性に対する試行園芸として1回目「パンジー・ビオラの押し花を使った壁飾り作り」、2回目「プランターへのハツカダイコンの播種」、3回目「プランターへのミニトマト苗の定植、ハツカダイコンの間引き」、4回目「フラワーアレンジメント」の試行園芸を行った。その結果、運動プログラムには消極的だった対象者だが、園芸活動は回想や他者交流の機会となり楽しみにつながる可能性があることや定期的な運動の機会につながる可能性があることが分かり、次の園芸療法目標を設定した。
長期目標(4ヶ月)
①園芸活動による運動習慣ができ、現在のADLが維持される
②施設での役割獲得や他者との交流から不安な気持ちやストレスが軽減される
短期目標(2ヶ月)
①週1回の園芸活動に継続的に参加し、自発的な立位作業を行うことができる
②園芸活動で他者との交流機会や手続き記憶の発揮機会を持ち、自己有用感や自己肯定感を 得ることができる
野菜や花の栽培など、立位で行う活動および、押し花や木の実のリースづくりなど季節を感じられる創作活動を取り入れた園芸療法プログラムとする計画である。
3.重症心身障害者デイサービスに通う脳性小児麻痺の女性に対する園芸療法初期評価
重症心身障害者デイサービスに通所する知的障害を伴う痙直型脳性麻痺で将来的に施設入所を検討している50代女性に対する試行園芸として、1回目「花のお弁当箱」、2回目「花の寄せ植え」、3回目「野菜の収穫」を行なった。植物の匂いや感触、土の感触などを感覚遊びとして楽しむことができる様子が見受けられ、学生や職員との共同作業を通して施設入所時の環境適応を促進できる可能性が示されたため、次の園芸療法目標を設定した。
長期目標(5ヶ月)
家族や職員以外の人との交流をさらに広げ、自分を取り巻く新たな環境に慣れることができる
短期目標(2ヶ月)
①園芸療法実習生という家族や職員以外の人との協同活動において、(対象者が自分で作業可能な)2工程までの繰り返し作業のプログラムに集中して取り組む回数が増える
②園芸活動の中で好きな作業を見つけ、満足感を得られる
寄せ植えや野菜栽培などで、土や苗を触って感触を楽しむ時間を持ち、繰り返しのある単純な工程の作業に取り組む園芸療法プログラムを行う計画である。
6月末から始まる「園芸療法実習Ⅲ」では、今回計画した園芸療法プログラムを実施し、園芸療法目標の達成度を評価していきます。この報告は、「園芸療法実習Ⅲ報告会」として、2023年1月15日(日)に淡路景観園芸学校で行う予定です。一般公開(予定)ですので、園芸療法を知りたい・学びたい、施設で園芸療法を導入したいという園芸療法に関心のある方はご参加ください。詳細は、別途ホームページにてお知らせします。
(文責 剱持 卓也)