Gallis先生には、自然環境、林業、農業と人間の健康等に
ついての研究者という立場から、ヨーロッパにおけるグリーン・ケアの取り組みを講義いただきました。
Christos Gallis 先生の教育研究活動
Gallis 先生は、自然環境、林業、農業と人間の健康等に
ついての研究者です。
ヨーロッパ22カ国が参加する欧州科学・技術研究分野における団体であるEuropean Cooperation in the field of Scientific and Technological Researchにおいて、グリーン・ケアを効果的に実施するための科学知識の蓄積をめざす組織Actionにも参加しています。
今回の招聘の主な目的は、日本の園芸療法とヨーロッパ諸国で行われている自然環境や農業を活用して人間の健康増進をめざすグリーン・ケアについて教授していただくことでした。
以下、授業内容の概略を紹介します。
1.農業におけるグリーン・ケア(Green Care)
グリーン・ケアの基本的理論および人間の健康への影響について。
社会的・療法的園芸,動物介在療法,ソーシャル/ケア・ファーミング,治療として進められてきたグリーン・エクササイズ(Green exercise),エコセラピー(Ecotherapy),ウィルダネス・セラピー(Wilderness therapy)の状況,活動,健康への効果などを紹介。
2.古代ギリシャのアスクレピオン(Asclepieion)における療法的ガーデン(Therapeutic Garden)と療法
植物を配した紀元前4世紀ごろの総合医療施設ヒポクラテス・ガーデンの紹介。
3.ヨーロッパにおけるソーシャル・ファーミング・ネットワーク,健康のための農業ネットワークについて解説。
4.グリーン・ケアに関する科学研究結果の例
臨床的抑鬱における療法的園芸、精神障害者のための農場動物を使った動物介在療法、認知症高齢者へのグリーン・ケア農場推進活動について紹介。
5.農業におけるグリーンケア,および ヨーロッパのソーシャル・ファーミングの概要
ヨーロッパの多機能農場、各国の社会的農場(ソーシャル・ファーム)の数,規模,機能、ヨーロッパにおける社会的農場の多様性,組織のタイプや種類,ターゲットグループ(対象集団)のタイプ,ソーシャル・ファーミングの質,今日のソーシャル・ファーミングの重要性,ソーシャル・ファーミングの支援構造について解説。
6.ヨーロッパ各国における事例
フランス,ドイツ,イタリア,ベルギー,アイルランド,オランダ,スロベニアの国家的背景,ソーシャル・ファーミングの技術の現状を解説。
7.ヨーロッパ各国におけるソーシャル・ファーミングの特徴・課題・展望
社会的に不利な人々に対しての包括的効果,性別による就業の違い,政策,景観および環境問題などについて解説。
ガリス氏は、園芸療法課程の授業を行う初めての海外客員教員でした。
授業では、いまやヨーロッパにおいても、植物が人に与える効果を農業や環境保全などの中で活用し、疾患、障害のある人々へ適応されていることをわかりやすく指導していただきました。
招聘の概要
Christos Gallis, Ph.D. クリストス・ガリス博士
出身 ギリシャ共和国
所属 国立農業研究財団 林業研究所 研究員
招聘期間 平成22年6月1日~7月31日
指導内容 ヨーロッパにおけるグリーン・ケアとソーシャルファーミング
研究目的 日本とヨーロッパにおけるグリーン・ケアの比較
担当科目 園芸療法特論