国境を越えた日本の伝統的庭園と園芸文化の広がりへ
さる4月25日(水)淡路夢舞台国際会議場にて、景観園芸国際シンポジウム「これからの世界における日本の庭園と園芸文化」を開催し、会場いっぱいの約100名の参加者を得て、熱心な討論が展開されました。
このシンポジウムは、本校も参加して運営している日米英の三カ国研修生交換プログラム「TRIADプログラム」の年次総会が、淡路で開かれるのにあわせて来日したその参加者とともに、今後のグローバル社会における日本の庭園・園芸文化の意義とその担い手育成の方向性を議論したものです。
(シンポジウムの詳しい内容については、こちら をご覧ください)
当日は、まず本学の美濃研究科長から主催者あいさつ、兵庫県の奥原まちづくり部長から来賓あいさつの後、国際的に有名な二つの庭園で人材育成に携わる二名の方から基調講演をいただきました。
アメリカのロングウッドガーデンで国際教育部長を務める ブライアン・トレイダー氏からは、「ロングウッドガーデンの人材育成と園芸の国際交流戦略」というテーマで、ロングウッドガーデンの概要や庭園としての使命ととともに、1956年から50年以上にわたって、専門家教育から生涯教育までさまざまな教育プログラムを展開していること、そのなかで日本との交流をつうじて生徒やスタッフに使命感や未来像の具体化、志気の向上を図り、その異文化理解と成長を促すネライがあることなどが紹介されました。


つづいて、イギリス、ナショナルトラストの クリス・チャーマン氏からは、1900年代の初頭から数多くの歴史的庭園の保全を進めるナショナルトラストの活動と、そのなかでの代表的な庭園であるヒドコートガーデンなどの紹介をいただくとともに、日英の庭園文化の相違を明らかにした上で、日本では精神的な世界観を重視する考えがあることに着目し、日本に研修生を派遣して日本の新しい庭園管理手法や伝統技術を学び、経験したものを将来イギリスで活かしていきたい、との意向を持っていることを紹介されました。


その後、昨年度のTRIADプログラムの日米英の三カ国の研修生も含めてのパネルディスカッションを行いました。
アメリカのロングウッドガーデンからの研修生であるグレゴリー・シャイヴァル氏からは、日本での研修で感じた日本庭園における「心の静けさを伴うデザイン」とそれを醸し出す水、コケなどの素材とその使い方についての着目点に関する説明がなされました。


つづいて、イギリスのナショナルトラストから派遣されたジョシュア・スパークス氏からは、日本庭園から受けた大きなインスピレーションの背景を分析し、その構成要因を「コントラスト」「魂を感じる雰囲気」「不完全さや自然の中で起こる循環がもたらす自然の深み」としてとらえ、それらの表現形を紹介されました。


最後に、日本から派遣された水野豊隆氏からは、自身が万年青(オモト)の生産者であることを踏まえて、海外から見て改めて日本の伝統園芸文化の素晴らしさを再認識し、それを海外に向けて紹介していく際の留意点などを実感したことなどが紹介されました。


これらを受けて、さらにパネラーの議論を進めるとともに、コメンテーターの松末浩二氏(TRIADプログラムにおいて盆栽研修の講師を担当)からは、日本の伝統園芸文化の普及への取り組みの視点に関して、また辻本智子氏(TRIADプログラム運営委員長)からは、パネラーから指摘されたデザインの視点を今こそ我が国のデザインに活かしていくことの重要性に関してコメントをもらい、最後に、コーディネイターを務めた当校の平田教員が、国境を越えて日本の伝統的庭園と園芸文化が広がりつつあり、そのための取り組みを続けていこう、と呼びかけて議論の幕を閉じました。



