美濃 伸之

今回は、公園ユニバーサル化の具体例を1つ紹介してみたく思います。私が関わっているものの一つに東京都練馬区の豊玉公園のユニバーサル化があります。ここは、おおよそ40年前に練馬区が造ったはじめての公園だそうで、場所も区役所のすぐ近く、公民館なども隣にあり、周辺の方々に大変よく利用されている公園です。練馬区は独自に福祉のまちづくり総合計画というのをもっていまして、そのアクションプランの一つとして公園づくりが含まれていたという経緯と豊玉公園がちょうど改修の時期を迎えていたことから、ここを対象にしたユニバーサル化がはじまりました。

この改修では、豊玉公園を良いものにしていくことももちろんですが、今後の公園づくりのプロトタイプとの位置づけも多分にありまして、その検討には3年と非常に長い時間がかけられ、丁寧に仕事がなされました。また、ここで大変に面白いのは、公園設計・建設・管理を担当する区公園緑地課(当時)とともに、ハード・ソフトを含めた福祉のまちづくりの担当所管である区地域福祉課(当時)の二課に加え、利用者ニーズの把握や会議の企画・運営等は、(財)練馬区都市整備公社練馬まちづくりセンターが事務局を担ったことで、さらに私を含めた3名のアドバイザーが加わり、これまた多様な人々の熱い議論が交わされました。検討にあたっては、ワークショップのみならず、障害を持っている人を含めた住民へのヒアリングや意見の聞き取りが大変に丁寧になされ、これまでのどんなモノがほしいか・・・ではなく、何ができるか、何がしたいのかといったことについて、そのニーズを聞き、具体の設計案に落とし込む作業をひたすら繰り返し、今年の春に完成の日を迎えました。

先日、ひさしぶりに練馬区におじゃまする機会があったので、そのときに完成した新・豊玉公園をはじめて目にしました。率直な感想は、「意外に普通だ・・・」ということです。これは関わったほとんどの人たちが口にしていることのようで、これまでユニバーサルデザインというと何か特別に目に見えるものがないとダメな気がしていましたが、それは大いなる気のせいで、できあがってみると極めて普通のものなんだということを再認識させられました。

練馬区では、今年からユニバーサルデザイン推進広場という、ソフトを支援する体制もはじまり、先日はその一環としてのリレー講座のお手伝いに行ってきました。
http://nerimachi.jp/diary/days/20101015_16.php
参加者の方々からは熱心な質問や意見をいただき、そのレベルの高さにびっくりしました。

ものづくりのプロセスを検討する機会が、このようにユニバーサル化の本当の意味を考えたり、いろいろな人の気づきへの一助につながることが重要なんだとの思いを強くした良い経験でした。このような機会を与えていただいた担当者の方々に深く感謝する次第です。



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