嶽山 洋志

この取り組みは、平成16年度に教材として開発したGPS搭載携帯電話とWEB-GISとが連動するシステムを公園管理に応用したものです。アメリカのサンフランシスコでは、これに近いシステムを導入したことにより、市の歳入が減り、部門の予算が削られているにも関わらず、参加している市の公園整備は改善されつつある、と報告されています。使い方は極めて簡単。GPS機能を搭載した携帯電話で、自分達が見つけた公園設置物の不具合などの写真を撮りメールすると、自動的にインターネット上にあるマップに位置と写真が掲載されます。また、携帯電話からは写真だけでなく「お気に入り度(その場所が来園者にとって魅力的な場所であれば☆5つ,不具合が多く魅力的でない場所であれば☆1つ,といった具合に5段階評価で場所を評価する仕組みを入れています)」の入力や,その公園施設や生き物、イベント活動に対する「メモ」を入力できることから、より詳しい公園情報を管理者に報告することができます。

WEB-GISの画面


有馬富士公園では、淡路景観園芸学校の授業の一環で調査を実施しており、4時間の調査活動で189か所の不具合情報,魅力情報を収集することができています。具体的には「2箇所、雨漏りしている」「女子トイレにあるペーパーフォルダの位置が悪く狭い」「照明がつかない」など、非常に小さく即対応可能な不具合情報を公園利用者から得ることができました。また、「鳥の巣を発見しました」など、公園の魅力向上に貢献するかもしれない新発見情報などが舞い込んでくる可能性も示唆されました。

公園利用者の評価


本システムの中にはBBS機能も設置されていますので,これらの情報をパークマネージャーが素早く収集し,可能なものは即対応,そしてそれをBBSで書き込むことができます。情報を送った公園利用者も管理者から反応があったことで満足し,さらに公園に対する愛着がわくものと考えられます。また、パークマネジメントの将来展望を語るに際し、利用者の視点、管理者の視点,双方の意識の一致点や相違点などの分析に加え、公園の不具合を改良した後の経年データの履歴管理や、「お気に入り度」から導き出されるシミュレーション結果に基づく重点管理エリアの選定など、次年度の管理予算策定における有用な根拠にもなりうると考えられます。このような情報の収集と提供の仕組みをどのように構築していくか,といったことも本研究科では議論しています。

公園利用者のお気に入り空間の分布

 

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