朝起きて,顔を洗って,食事をして,着替えて,家を出て今日の予定を考えながら仕事場や学校に向かい,出会う人にあいさつをして・・・・。

仕事場に着いたら仕事の段取りを考えながら仕事にとりかかり,学校では講義を受けたり,友達と話したり・・・・。

昼食をとって,また仕事や勉強をして,クラブ活動したり,お酒を飲んだり,家に帰って食事をしたり,風呂に入ったり,趣味の時間をとったり,と私たちは1日にいろいろなことをして・・・・。

「あー,今日も一日終わったー!」,「今日はいいことあったな!」,「今日はまいったなー」などいろいろなことを考えながら,人は日々心と体を動かし,いくばくかの満足を感じながら生活しています。

ところが,人はこうした当たり前に思っていた生活ができなくなってしまうことがあります。

これが一時的ならまだしも,ずっと続くとなったら,「何かをしてみよう」という気持ちもだんだんおきなくなるかもしれません。こうなると,何かを考えることや活動するといったことも減り,人と話すこともおっくうになり,心身機能は低下し,生活の質(Quality of life : QOL)も下がってしまいます。

園芸療法は,こうしたときに効果的な療法です。

園芸療法では,特別な園芸はしませんが,誰もが見たり,食べたりしている身近な植物,きれい,おいしい,いい香りがするといった気持のよい感情がうまれやすい植物をよく用います。こうした感情は,植物を前にすると誰にでもおこりやすいため,園芸をした経験がない人も,「何かをしてみよう」という気持ちが下がってしまった人も,「やってみようかな」というスイッチが入りやすいのだと思います。

さて,実際に植物を育てるとなると,生き物ですから,植物のことを毎日気にかけていかなくてはなりません。
しかし,「自分が植えた植物だから」,「自分が植えた花が咲くのが楽しみだから」,「自分の育てたものを食べてみたいから」,「あなたと一緒に植えた花だから」など,自分と植物の間になんらかの関係性が生まれると,人の気持ちは上向きになってきます。人は起き上がり,植物のあるところまで移動し,植物を見ながら,「水をやらないと」とか,「花がいっぱい咲いた」,「もうじき収穫できるかな」などいろいろなことを考え,ときには,周りの人からも「きれいね」「収穫が楽しみね」などと声をかけられて話もはずみ,心と体を動かしていくようになります。

(↑左:園芸療法の一場面(花壇の手入れ))
(↑右:園芸療法の一場面(トマトの収穫))


こうした日々が続くと,園芸はその人の生活の一部となり,生活意欲も心身機能も回復し,ひいては園芸に限らずいろいろなことに前向きになれるのではないでしょうか。

「そんなに,うまくいくの?」と思われるかもしれませんが,対象となる人の気持ちや健康,経験などを理解して,その人が興味を持ってできる園芸を考えて,その人に合わせたおだやかな支援を続けていくことで良い結果が訪れる可能性は高まります。

関係のスタッフと連携をとりながら,植物や園芸を通して人の気持ちや心身機能を回復させるお手伝いをする,これが園芸療法士の仕事です。
園芸療法士は新しい仕事ですが,現代社会では,そのニーズは確実に高まっています。医療・福祉分野に限らず,社会のいろいろな分野で,園芸療法を必要とする人にとって,頼りになれる園芸療法士を,ここ淡路島から育てていきたいと思います。

(↑左:園芸療法の一場面(デイサービス利用者様と))
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