美濃 伸之

今年になって公園バリアフリーの継続的な改善について相談を受けることが多くなりました。これは‘スパイラルアップ’と称して、バリアフリー法の中で決められているもので、国や地方公共団体は具体的なバリアフリー化を段階的・継続的に発展を図っていくことが責務となっているのです。ところが、実際にやろうとするとなかなか一筋縄ではいきません。もちろんマニュアルがあるわけではなく、担当者はその仕組みを自分で考え、情報を集め、協力者を募り、実施までこぎつけなくてはなりません。

このような際には、障害のある人たちの意見を聞こう、ないしは、実際に公園に来てもらって現場をチェックしてもらおうという類の、‘障害当事者の参画’がよく話題となります。一見もっともらしそうなのですが、どのような人たちの意見を、どのようにして聞き、それを計画や管理運営にどのように活かしていくのかなどについて必ずしも手法が確立しているわけではなく、みな試行錯誤を繰り返しています。特に、障害当事者の意見については、その意見がどこまで該当する障害を代表しているのか?特定個人の好みのような要素は入り込んでいないか?などについて厳密に評価することがなかなか難しく、担当者を大いに悩ませているのが実情です。障害当事者の方々にしても、いきなり公園に連れてこられて、さぁチェックしてくれって言われても、一体何をどう見たらよいのかを計りかねているといった様子を見ることもしばしばです。

また、公園バリアフリーのガイドラインがモノや空間をつくる時には有効だけれど、うまく楽しんでもらうための配慮など、利用や管理を支援するものとはなり得ていないこともよく指摘されます。具体的には、園路の幅は何cm以上とか、横断勾配は何%以下でないとダメとかは書いてあるのだけれど、利用者の意見を聞きなさいとか、こんな風に情報発信するとみんなが便利だよといったことについてはなんの取り決めもないといった具合です。そのため、公園をつくるときにはみんなで一生懸命に検討を重ねるのですが、一旦つくってしまうと後はほったらかし・・・また、出来上がった後に障害当事者の人たちを含むワークショップなどで意見や課題が出ても意見を聞きっぱなし、となってしまうことも散見されます。

このように、公園バリアフリーを継続的に改善する仕組みについては未だ発展途上なのです。

いま、私は福岡にある国営海の中道海浜公園と東京都練馬区の公園管理の現場に、委員会メンバないしはアドバイザーという立場でかかわらせてもらっています。立地環境や管理運営体制、訪れる人の層などが全く違いますが、なんとか公園バリアフリーの継続的改善を具体化しようと、担当者の方々が頑張ってくれています。議論はまだはじまったばかりで、なかなか難しい局面もありますが、ぜひ良い仕組みを構築して、世に発信できればと考えています。おりしも国土交通省において都市公園の移動等円滑化ガイドラインの見直しを行うべく、調査がはじまったと聞きました。主たる調査の対象は「認知の障害」への対応についてのようですが、モノや空間のスペックのみを決めるのではなく、仕組みづくりについてもぜひ議論していただきたいものです。できあがったモノや空間を時間軸に配慮した仕組みを構築して管理していく・・・このようなことは公園バリアフリーの現場においても、大きな仕事のひとつとなりつつあります。



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