数年前からかかわっている兵庫県南あわじ市の灘黒岩水仙郷が2023年末にリニューアルオープンしました.ここでは灘黒岩水仙郷で行った教育研究について紹介します.


灘黒岩水仙郷
灘黒岩水仙郷のニホンスイセン


灘黒岩水仙郷には,およそ500万本のニホンスイセン(Narcissus tazetta var. chinensis)が約7haにわたって自生していると言われており,福井県の越前海岸,千葉県南房総の鋸南町,静岡県伊豆半島の爪木崎などと共に水仙自生地として全国的に知られています.ニホンスイセンの開花期(12月下旬から翌年の2月下旬まで)に灘黒岩水仙郷は開園しており,毎年7~8万人の観光客が当地を訪れています.

急斜面での球根植え替え
南あわじ市の職員の方とディスカッション


近年,灘黒岩水仙郷では開花しない株の存在が問題となっていました.これは淡路島を代表する観光資源の価値を損ねかねない由々しき問題です.著者らは南あわじ市と協力して,ここの問題を解決するために灘黒岩水仙郷での調査研究や実習教育を行っています.上の画像は,学生らが傾斜角20~40°の急斜面で球根を植え替えしているところ,学生らと南あわじ市の職員の方とが灘黒岩水仙郷の活性化についてディスカッションをしているところです.

球根調査
施工実験



ニホンスイセンの持続可能な維持管理を目指した研究も行っています.一般的に球根の重さが30g以上になると開花すると言われていますが,調査した12箇所中11箇所で30g以上の球根は0~36球しかなく,最も多かったのは5g以下の球根で8~120球もありました.1m2あたりの球根数を50球程度に維持しなければ個々の球根が大きくなりません.灘黒岩水仙郷で花が少なくなってきたのは,開花できる30gのサイズに満たない小さな球根が多くなり,球根が狭い空間に混み合ってしまい,個々の球根が大きくなれないことが原因であると考えられました.これらの調査結果を元に球根の数が増えるのを抑制しつつ,個々の球根を大きくするような維持管理方法を確立するための施工試験も実施しています.

新たな施設
園路からの風景


令和4年から令和5年にかけて,施設の老朽化に対応するためにリニューアル工事が行われました.展望デッキやカフェがある施設や新たな園路が整備され,令和5年12月25日にリニューアルオープンされました.新しい施設に引けを取らないように,ニホンスイセンの維持管理業務にかかわっていきたいと思います.

 



 

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