東北復興への取り組み

今回、東日本大震災の復興支援として参加するにあたり私は不安でいっぱいだった。それは、被害を受けられた方々の気持ちをちゃんと理解することができるのだろうかという思いからであった。メディアなどでの情報を毎日のように聞いても、なかなか心の底から災害による被害の苦しみや悲しみについて理解できたと実感することがなかったためであり、今回のような被害を受けられた現地の方の生活状況を分からぬまま、自分は素直に支援が出来るのかという思いからこのような不安を感じていたのだと思う。そのため、今回の活動では仮設調査として現地の生活状況や被災者の方々の心情を調査し、その地の現状について理解したいと思い参加させていただいた。つまり今回の支援に参加させていただいた私の目的としては、まず被害地調査として実際に現地の状態から地震、津波の自然の脅威をこの目で確認し、そこから学ぶべきことは何か、今後への対策として何が必要とされているのかということを確かめる、そして住民に対する調査として現在の被災者の方が住まれている環境や生活状況を確認し、人として何が出来るのか、また『緑環境景観マネジメント』の分野から何が可能かを考えることであった。

そのような目的と不安を持ち、実際に現地の状況を見て感じたことは、想像していたよりも凄まじい状態ではなかったということである。それは、被災当日の状況などをメディアで見ていたためだろうか、元の状態を知らないせいか、思っていたよりも瓦礫処理なども行われており、震災の様子を直感的に想像できる風景ではなかった。今改めて考えると、半年が経ち今もなお山のように瓦礫、車などが積まれているという状況は、想像もつかないほどの被害だったということを表しているように思える。津波による被害は、反対に建物やインフラなどすべてを一掃させているようで、元の情景を知らない私からすると、その被害のひどさを感じることは困難であった。また河北地区と港地区の仮設で行った住民に対してのヒアリング調査では、現地の方々が想像以上に明るく、また優しく声をかけてくれ、大災害を受けた被災地とは感じられないほどであった。それも子供から大人まで関わった全ての人が元気で、反対に何をしたらいいか分からなく不安だった私の方が元気がなかったように思えた。生活風景の調査では、自宅の中までは拝見することができなく、現在の生活状況というのは確認することはほとんどできなかったが、その地区内での人とのつながりとしてのコミュニティは聞いていたように、ある程度確立されており、特に港地区でその地区に住む方々を愛称で呼び合うなどの親しい雰囲気を感じるほどコミュニティが出来ていた。そのような現状を知り、より今回の自分の必要性というのを理解できないままでいたのを覚えている。

そのように感じていた私は、どうしてもこのような被災地への支援として何が求められ、私に何ができるのかを確認したいと思い、現地の役所に勤められている松浦さんの案内による現地の調査、役所のヒアリング調査を希望した。それまでは被災地の状況を現地からという近いところから見ていたが、その調査ではその地域を一望できる丘の上から全体風景を見ることができた。それを見たときに今までよりも被害の恐ろしさを感じることができた。建物の後、瓦礫の山、ほとんど何もなくなっている殺風景な風景が目に入りこのように一瞬で街を飲み込んだ自然の脅威を、現地に行き初めて感じることができた。その力を見て、人間の力で完全に止めてしまうのは不可能に近いのではないのかと感じさせられた。これから様々な災害が起こるということを考えても、それらから完全に免れるというのは難しいと思わされ、そこから災害を受けた後の対処が大切だと今回強く感じた。それは災害に対する一人ひとりの心がけはもちろん、被災を受けた方々、さらにその地域以外の方からの復興への強い気持ちが大切になってくるのではないかとその後の役所へのヒアリング調査からも感じさせられた。ヒアリング調査では実際に役所としてどのような取り組み、住民からの要望が寄せられているのかについて伺うことができた。ヒアリングをさせていただく前は住民からの仮設など生活環境についての苦情などが多いのではないかと思っていたが、実際住民一人一人が、またボランティアで来られている方々が毎日協力し合い、復興を目指し、前を向いて取り組んでいるということを具体的に聞き感動した。実際に現地では、今もなお瓦礫集めやその他のゴミ等の処理活動などのボランティアの方々の姿を見ていたので、よりそこでの話の内容が理解しやすく考えさせられるものがあった。

今回そのような活動や経験を通して、今回私たちに出来ることは何かについて感じたものがあった。それは、‘支援に行くという気持ちと行動’‘笑顔でいること’‘緑を活かした空間つくること’の3つだった。今回被災地に行き、この地域の方々と接することで、相手の方から「元気になった」ということを何度もおっしゃっていただいた。そのことから遠くからでも‘行く’ということが大切であると感じた。また街中でテントを張り瓦礫処理をされている方々のように、継続して‘行く’という気持ちと行動力が必要だと感じ、是非ともまた現地へ行き、今度は今回学んだことを活かし取り組んでいきたいと思う。2つ目の‘笑顔でいる’というのは、今回現地に行ったが、被害を受けるという気持ちは経験しないと理解できないものだと感じ、そこで私たちに出来ることは自分のいつもの元気を持っていくことではないかと実感したためである。その元気がどのように現地の方に受け止められるかは分からないが、元気はその地域を明るくできる最大の方法だと今回感じることができた。3つ目の‘緑を活かした空間のつくる’というのは、この分野の専門として出来ることはやはりこれだと思ったためだ。生活空間におけるハードの面での支援はどうしても難しい。そこで、私たちが出来るのは小さいながらも癒しの空間をつくることだと、この分野の良さを再確認した。そのため今回の支援活動としてのフラワーアレンジメントや花苗プランターづくり、公園の植樹など小さいことかもしれないが、少しでも現地の方にとっての思い出の空間を提供できたのではないかと思われる。そのような活動が今後も継続して行っていくことが必要だと感じた。また、そのような活動を行っていくのにも緑に対する知識を付けることが必要になってくることを改めて感じることが出来た。

今回被災地へ行くことにより、平時な日常では知ることのできない体験をすることができた。またコミュニティに関する問題、仮設住宅に関する問題などまだまだ考えていかなければならないことが多く発見されたが、そのような中からも私たちに必要とされることが何かを考えられる機会となった。そのような問題解決のため、また今後もこの教訓を忘れないようにするためにも今後も継続した活動、また今回の東北だけではなくこれから起こるであろう様々な自然災害を受けた被害地への支援も積極的に行っていきたいと感じさせられた。

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