まちづくり活動に関連する英語

私の教育研究の対象としている「まちづくり」の活動現場にはたくさんの「ボランティア」のみなさんがいて、今やその大きな担い手となっています。 さて、この「ボランティア(volunteer)」、日本語に訳すと何になるでしょう。 そう「奉仕活動」ですね。 と、言いたいところですが、実はそれは「間違い」です。お手持ちの英和辞典で「volunteer」をひいて確かめてみてください。たぶんそこには「奉仕」の文字は出てこないと思います。代わりに目に付く文字は「志願、志願兵、義勇軍、・・・」。ずいぶん勇ましい意味ですね。「軍」や「兵隊」という言葉が出てくるのですから。 では、逆に「奉仕」を今度は和英辞典で確かめてみましょう。奉仕の英訳として「volunteer」が出てくるでしょうか。たぶんそれはなく、そこには「service、attendance」などが並んでおり、なかには「bargain」とう単語も見つかるかもしれません。 そうです、本来はボランティア≠奉仕なのに、いつのころからかわが国ではボランティア=奉仕という訳が定着してしまったのですね。 一方、奉仕に似た言葉に「チャリティー(charity、慈善)」があります。この語源を調べるとラテン語のcaritus(愛情)、curare(気にかける、世話をする)から来ているそうです。これに対して「サービス」はserve(仕える)という意味ですから、チャリティーが上から下への愛を込めた行動であるのに対し、サービスは下の者が上にお仕えするように感じます。ですから、「仕える」という意味のある奉仕は、まちづくり活動を説明する言葉としては実はそぐわないところがあるのです。身近な公園のお世話やまちの美化などの活動を見ていると、奉仕よりチャリティー(愛情をもって世話をする)の方が、まちづくり活動の概念としては近いのかも知れません。


まちづくりへの愛と自発が生まれる工夫を

さて、話をボランティアに戻しましょう。先ほどの訳を見てみると、ボランティアは、客観的に人間の行動を説明しているだけの言葉であり、そこにチャリティーのような道徳的意味はありません。「自ら志願する行為」はすべてボランティアであって、その行為の中身の善悪を問うてはいませんし、「有償か、無償か」の議論もありません。大事なのは、「自ら志願」して行動しているかどうかなのです。無償でも頼まれ仕事はサービスであり、お礼を受け取ったとしても自ら志願した行為であればボランティアなのです。そう考えると、私はボランティアに一番ぴったりの訳は「自発」ではないかな、と思っています。 まちづくりは、自分たちのすむまちをよりよいものにしていく活動ですから、自分の家のお庭をきれいにしたり、お家を修理したりするのと同じで、本来いそいそと楽しく「自発的に」行われても良いはずです。 しかし、わが国のまちづくりボランティア活動では、その訳語には「自発」ではなく、つい「奉仕」の語があてられてしまいます。私は、この背景のひとつには、その活動による成果が、自分の利益として具体的に返ってくることがわかりにくい、ということがあるからだと思っています。ですからまちづくりの教育研究に先導的に取り組む人々には、まちづくり活動の展開によってそこから得られる利益や効用を具体的に分かる形で発信していくことが強く求められていると思います。 そのような積み重ねが、ボランティアに本来の意味「自発」を取り戻すことにつながるのでしょう。私もボランティア本来の意味「自発」が自然に用いられるようになる日を、そしてまちづくりが愛と自発で満ちた行動・活動となる日が早く来ることを祈りながら、教育研究活動に取り組んでいきたいと思っているのです。

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