1) 植物の力~

こちらをご覧のみなさまは、とても多くの植物と触れあってきていることと思います。

実はこの植物たち、ひとの健康にとてもいい働きをしてくれていることをご存じですか?

 

私たちが健康を害すると自身の力で治そうとするものですが、多くの場合その力が足りずに病に冒されてしまいます。しかし、植物の環境に身をおき、植物とかかわりを持つことは、自分で治す力(自然治癒力)を高めて、健康回復のお手伝いとなるのです。

では、具体的に植物が持つどのような力が私たちの健康に影響を与えてくれるのかみていきましょう。

まずは、植物を「みる」「かぐ」「ふれる」「きく」「あじわう」というひとの五感への刺激による効果です。中でも視覚と嗅覚からの刺激による効果は大きいとされます。たとえば、植物の持つ色の効果がその一つです。私たちが見ている色は電磁波の一種であり(可視光線と呼ばれる)長波長が赤色、短波長が紫色とされています。そして緑色は波長の中では赤と青の間に存在する波長とされ、極端な波長を打ち消して見えるために安定感をひとに与えてくれる特性を持っています。そのため、心理的に穏やかな安心感を与え、またゴルフ場の芝や山の風景を眺めることで眼精疲労を軽減する効果があるとされています。さらに色彩には様々な心身効果があることはみなさまもご存じかと思います。たとえば,寒色系の花は情緒を安定させ、血圧を低下させるのに対し、暖色系では気分の高揚が起こり、血圧を高める傾向があります。

一方、植物に直接かかわる能動体験(園芸など)による効果も、健康に大きく影響を与えてくれます。たとえば、植物の栽培作業をすることでリラクゼーションと気分転換の効果があるという報告がされていますし、また鉢植えと土混ぜ作業中の脳を測定したところ,両作業が緊張をほぐす効果があるようです。このように,植物を栽培する課程には心理的効果が得られるとされますし、また,土おこしや耕す作業はエネルギーの発散となり、新陳代謝を促し,攻撃的な感情を抑える効果もあるのです。それでは具体的に、ひとが植物の栽培にかかわることでどのような効果を得るのかみていきましょう。

(↑左:緑の効果)
(↑右:色彩効果)


2) 植物とのかかわりによる健康効果

1. 植物の生長を通して得られる心理的な効果

私たちは植物の栽培を通して様々な体験をします。生長過程において「この花きれいね!」」といった快感情をもたらし、花の開花や野菜の収穫といった将来に対しての期待感を生みます。花や実をつけたことで何かを成し遂げたという達成感を味わうことができますし、自分で育てたという自信につながるでしょう。さらに、「もう少し育てよう」、「もっと難しい植物にチャレンジしよう」とさらなる意欲が増してきます。このような経験が脳の中で「プラス思考」となり、脳から自律神経系や内分泌系といった、心身を健康に保たせる重要な部分に働きかけをし、元気にさせる素となる物質をつくってくれます。また、免疫力を高めて風邪をひきにくい身体にしてくれるのです。「心身一如」といわれるように、まさしく、植物が心も身体も共に健康へ導く役割を担っています。

2. 自ら活動を行うことによる身体的な効果

「園芸は安上がりな健康法」といわれており、植物を育てる行為では様々な運動機能を使っています。それは決して無理な動作を強いるのではなく、植物が枯れないように水やりをするためにジョウロを持ち、しっかりと土を踏みしめて歩く。収穫物を取るために普段より少しだけ遠くに手を伸ばす、などで身体的な運動が得られます。部屋に閉じこもりがちとなる高齢者にとっては、畑や庭のある空間に出るだけでも運動量が普段より増し、心肺機能を高めることとなるでしょう。園芸作業は難易度の幅があり、容易な作業を選んで部分的に関わることができるため、十分に身体全体の筋肉や関節を動かす働きがあります。

3. 先を見越して計画を立てる認知的な効果

植物を育てる行為では、脳、特に斜め前方に位置する前頭連合野を大いに刺激する働きがみられます。たとえば、園芸作業では、目で植物の状態を見て,葉の数や茎の長さを分析します。そして、今植え替えるべき植物と植え替えにはもう少し時間をおくべき植物とに分類し、栽培過程の現状を判断します。また、デリケートな植物を両手で一つ一つ植え替えるには注意力を必要としています。このように意思決定をし、計画を立てて進める行動は、脳を活性化させることに大いにつながっていくのです。園芸作業は同じ作業を継続することが多いですよね。そのためには作業工程を記憶しますから,認知機能を刺激することになります。

4. ひととの関係における潤滑油となる社会的効果

社会的効果として、ここではコミュニケーションの媒体としての効果をあげてみます。精魂込めて育てた植物が花をつけると、それを見た人が「きれいだね」と感想を述べ、その栽培方法について語り合うことがあります。また、野菜の実を収穫して人にあげることで「あのトマト、あまくておいしかったよ。」など、周囲からの評価を得ることもあります。庭づくりを行う中で、近所住民と種を分け合い、新しい品種について語り合うなどの光景もみられ、それまで疎遠であった人たちとのあらたなコミュニティの形成に一役買う場面も多いものです。こうした交流も先ほどあげた「うれしい、たのしい、わくわくする」といった快感情を引き出します。

私が学生と共に高齢者の施設で植栽を行った際、当初あまり高齢者と接したことのない学生にとまどいがみられました。しかし花の植え付け作業が進むにつれて、学生が優しく手を取って庭を歩く様子や、学生に明るい表情で、昔植えていた花の話をしきりにする高齢者の様子がみられました。また、手が届かないところに咲いている花を、汗を流しながら一生懸命取り手渡す学生、そしてその花を大事に抱える高齢者の様子はなんとも微笑ましく、暖かなコミュニケーションが生じていたものです。このような世代間交流をスムーズにさせることができるのも、植物が身近にある分、世代を超えて話題となりやすく、交流をうながしやすい媒体だからでしょう。こうした交流も「どきどき、わくわく感」につながりますよね!

(↑左:高齢者施設における園芸療法)
(↑右:学生との交流)


さいごに

 園芸作業はあくまでも、「むりせず、楽しく!」自分のペースでおこなってください。たとえ失敗しても「希望をもって!」プラス思考で取り組みましょう。決してストレスをため込むようなことだけはなさらないように。

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