オオフサモMyriophyllum aquaticum (Vell.) Verdc.は、南米原産の多年生の水草で、日本では、2000年代前半までは、水辺やビオトープ用の緑化資材として流通していました。その結果、全国各地の湖やため池などの止水域や、流れの緩やかな河川・水路で、逸出した個体が野生化して繁茂し、流水阻害や在来生物の減少などの問題を引き起こしています。

オオフサモ
ため池の水面を覆い尽くしたオオフサモ


 こうしたことから、2005年に特定外来生物に指定され、外来生物法による規制の対照となり、野生化している地域では、駆除がさかんに行われるようになりました。

 本種は、日本では雌株のみが侵入しているため、結実はしません。しかし、栄養繁殖によって爆発的に増加します。また、わずか2cm程度の茎の断片からでも容易に再生します。このため、駆除が困難で、駆除活動をおこなっている地域でも、なかなか根絶には至っていません。

 2012年度、当研究科の学生の一人が本種の根絶のための各種実験をおこなったところ、以下の方法によれば、根絶できる可能性があることを見出しました。すなわち、「本種の抜き取り作業をしたあとで、池底の泥をある程度の厚さではぎ取って、地下茎断片を取り除く。また、作業中に発生した茎断片が水中を浮遊するので、これを網でていねいに掬い取る。さらに、取り除ききれなかった小さな断片からの再生を防ぐために、対象地を遮光シートで覆い尽くして、3ヶ月間以上は暗黒条件下に置く」という方法です(金丸ほか2015)。

 当キャンパス内には、通称「エコ池」と呼ばれる小さなため池があり、ここにはオオフサモが繁茂しています。おそらく、このキャンパスが造成されたときに、当時はまだ流通していたこの植物を緑化資材として導入したものと思われます。しかし、いまやそれは負の遺産となって、この池の管理上の大問題となっています。そこで、本研究科の演習科目「里地里山の保全管理演習」の授業内で、上述の方法を使って、オオフサモの現場での根絶に2016年から取り組むこととしました。

 上述の方法をひとつの止水域で全面的に適用するとなると、全面を遮光するプロセスによって、オオフサモ以外の水生植物や、その池で暮らしている様々な水生動物に壊滅的な影響を及ぼすこととなります。エコ池では、オオフサモ以外にも数種の水草類が生えていて、また、メダカ、ニホンアカガエル、多種のトンボ類、タイコウチなどの水生昆虫類、その他さまざまな水生動物が生息しており、中には、レッドリストに記載された絶滅危惧種も含まれています。これらに影響を与えることなく、オオフサモのみを根絶する必要があります。

オオフサモの抜き取り
池底の泥の剥ぎ取り
暗黒処理1
暗黒処理2


 そこで、この授業では、池を小区画に区分して、毎年、1区画ずつ根絶作業を行って、5年程度をかけて根絶することを目指しています。この方法では、一度、オオフサモを除去できた区画に、再定着をさせないことが重要です。順調にすすんでいたのですが、この春、オオフサモの生育が例年よりも順調で、昨年までに根絶が完了していた場所での若干の再定着を許してしまいました。敗因のひとつは、年間の作業時間の少なさ。実は、授業の関係から、年間1回、180分の作業のみで、根絶しようとしていました。低労力で達成できれば、他の公園緑地などでも参照できる事例となると考えたからでもあります。しかし、さすがにそれは甘かった。再定着の状況のモニタリングだけでも、もう少し高頻度に実施するべきだったという教訓が得られました。

 今年度、急遽、再定着があった場所での除去を行い、月1回くらいは再定着の状況を確認していくこととしました。あと3年くらいでこの池からの根絶を達成したいのですが、どうなることやら。根絶後に成立するであろう水生生物群集に思いをはせながら進めています。

 なお、幸いなことに、この池より下流側の、学外の水域にはオオフサモは広がっていないようです。ここで食い止められているうちに、根絶を達成しなくてはなりません。

 他種の保全と同時進行で特定の種を根絶させる作業は、想像以上に手間がかかり、外来種問題は、まずは、うかつなものを導入しないことが何よりも大事だと痛感します。この授業に参加している学生の皆さんには、こうした作業を通じて、緑化・植栽計画時に侵略的な性質をもつ植物をどう取り扱うべきか、しっかりと学んでいるはずです。

 

参考文献:金丸拓央ほか 2015 外来水生植物オオフサモMyriophyllum aquaticum (Vell.) Verdc. の駆除手法の検討. 緑化工学会誌,40:437-445.


 

 

 

PAGE TOP