東日本大震災から、早や3年近くが経とうとしています。この間、高台移転の造成が始まったところもありますが、まだ遅々として復興の展望の見えないところも少なくありません。当校では継続的な支援活動を行っており、ここでは2013年度におけるその経緯を示したいと思います。

 2013年6月26日-27日には、復興支援活動として林教員、天野教員らが研究科学生(王瀟、西香奈枝)と共に、宮城県南三陸町及び東松島市で活動を行いました。26日は南三陸町港地区で園芸療法を活用したフラワーアレンジメントを、27日は東松島市宮戸地区3カ所でフラワーアレンジメントと併せて復興まちづくりの話し合いを行いました。その結果、これまでの学生の提案や跡地利用計画や高台移転地の公園緑地などの計画も合わせて、宮戸市民センターに対して提案しました。

 



11月6-8日には兵庫県立淡路島公園で活動している「淡路島公園を楽しもう会」と同行し活動しました。6日は仙台で花や緑を活用した復興支援を行っている現地の市民グループと連携して「ストレスケア」やフラワーアレンジメントの研修等を行いました。7日は石巻市追波川多目的公園の仮設住宅で、また8日は東松島市の宮戸島でフラワーアレンジメントや緑化支援を行いました。合わせて宮戸島地区の今後のまちづくりに関する打ち合わせ等も行いました。

 


年が明けて1月8日には、東松島市の宮戸市民センターで国の特別名勝である宮戸島の情報発信を目的とした広報媒体の作成について協議しました。3月26日-28日には(特)アルファグリーンネットと林、藤本(園芸療法士)らが宮城県に同行し、同様の復興支援活動を南三陸町や石巻市で行いました。

 


これまでの主な活動としては、花やみどりを活用した園芸療法的なフラワーアレンジメントなどのプログラムの提供や学生の提案と合わせて、復興まちづくりへの跡地利用計画や高台移転地の公園緑地の計画づくりなどを提案してきました。3年が過ぎ、今後は高台移転地への植栽や緑地の提案などが具体化していくと思われます。継続的な支援は今後も必要であると感じています。

 次に園芸療法課程の活動を記します。平成25年度の活動としては、兵庫県園芸療法士協力のもと岩手県立大学看護学部との共催で8月と2月の2回、震災支援活動を行いました。平成25年8月25日~27日には“震災後3年目のケア トラウマを持った子どもたちに今すべきことを考える ~海難事故により発生した解離性障害の治療ケースから~”をテーマに、盛岡市岩手県立大学滝沢キャンパス、久慈市県合同庁舎、二戸市県合同庁舎にて県内の小中高等学校教諭、養護教諭、医師、保健師、その他被災者を支援する立場の方を対象に研修会を行い、全会場で60名の参加がありました。まず天野玉記教員から震災後3年をむかえ、ストレスを抱える方が数多くいることを踏まえ、解離性障害を抱える方の治療を事例として、早期の気づき、継続的な支援の必要性を講義しました。その後、インストラクターの上地あさひ、兵庫県園芸療法士の黒部一之、沖鈴子が園芸療法プログラムの一例として、ハーブ手浴や園芸箱庭作りを紹介し体験していただきました。ハーブ手浴はハーブの香りによる刺激、効用からリラックス感を得ることができ、ゆったり時間を持ち、自分自身について語る機会となることを伝えました。園芸箱庭作りは園芸用用土(手軽さ、室内でも行えるプログラム提案という観点から水で膨らむタイプを使用)を容器に入れ、ブロッコリースプラウトやかいわれ、芝などの種をまきます。根つきハーブを植えてもよいです。小枝やビーズで飾り付け、庭を完成させます。自分の世界を現実の世界に投影させることができ、さらに、発芽、成長を通して、植物の力強さを体験することとなります。ジオラマのベンチなどを置き、自分と信頼できる誰かがベンチに座っていることを想像し、それを通して会話することで“頼りにできる人がいる”、“話を聞いてくれる人がいる”と安心感を得ることができます。参加者からは“成長し、どのような庭になるのかが楽しみ”“ストレスを抱える生徒と一緒に作りたい”との感想を得ることができました。

 

 

平成26年2月23日には岩手県陸前高田市の高田一中仮設住宅にて、仮設住宅住民を対象に“虹色の種サロン”と題し、園芸療法課程非常勤講師のグロッセ世津子、インストラクターの上地あさひ、兵庫県園芸療法士の猪俣恵、近藤智美が園芸療法を活用した支援を行いました。“春を活ける”をテーマにフラワーアレンジメント制作に取り組んでいただきました。まず牛乳パックをアレンジした器に和紙や園芸雑誌の切り抜き、マスキングテープを用いて自分好みにコラージュした器を作り、スイセンやツバキ、キンカン、梅などの花材を生けていきます。参加者は他者と自分の作品を見比べながら“それもいい”“私もそうしてみよう”と熱中して取り組んでました。最後には作品を披露し、皆と共有する時間を持つことで、満足感や達成感を充足させるだけでなく自分の思いを語る機会となりました。虹色の種サロンはグロッセ氏による継続的な活動ですが、継続することにより、参加者との関係性を築き、思いに寄り添うことにつながると考えます。参加者からは“花とあなたたちに癒されている”“毎月来てほしい”と声をいただきました。今後も被災者の思いに寄り添い、活動を続けたいと考えています。(林まゆみ)

 

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