大藪 崇司

写真1:山に張り付いて広がる街

さて、このコラムも第3段となりました。これまで国内の緑化現場、半乾燥地とされている中国内モンゴル自治区について紹介してきました。今回は2010年11月に訪れる機会が得られた亜熱帯地域であるインドのミゾラム州での調査活動について紹介したいと思います。

インドと日本の時差は、3.5時間で、直接、インドに入国する方法もあるのですが、今回はタイ経由にてコルカタ(昔でいうカルカッタ)に入り、そこから国内線を利用してミゾラム州に入州しました。ちなみにミゾラム州に外国人が入る場合は、許可が必要です。前もって届け出をし、入州後警察署に行ってパスポートとビザを提出しなければなりません。前もってというのがかなり困難で、現地に1人居られる日本人を通じての申請となり、多大なご協力を頂きました。ミゾラム州の州都であるアイゾール(Aizawl)は、25万人程度の街ですが、その多くの人が山の斜面に張り付いて生活しています(写真1)。日本の尾道を雑多にそしてカオスにしたかの様な街です。道が入り組んでいて一度や二度では自分がどこにいるのかもわかりません。この混沌とした生活がなんともゆっくりしていて私は好きですが、人によっては生理的に受け付けないかもしれません。。。

インド東部では、2006年にメロカンナ(Melocanna baccifera)というタケが一斉開花して枯死し、その後の回復過程が追跡調査されています。タケ類は、一斉開花と結実を何年か周期で繰り返します。日本でよく見られるマダケでは約120年、モウソウチクでは67年に1度の周期で竹林全体に一斉開花が起こり枯れてしまいます。このタケは、48年に1度の周期で開花枯死することが報告されており、開花前から継続的に調査された貴重なデータとなっています。

写真2:つる植物の樹冠を突き抜けて伸びるメロカンナ

さて、本来の目的である竹林の調査地についてですが、もともと竹林だったところが枯れてクズのようなつる植物に覆われてしまっています。が、よく見ると実生で生えてきた新桿がその樹冠を突破して伸びていっています(写真2)。もともとの竹林は3万本/ha程度であり、枯死と実生での更新により10万本/ha程度の高密度群落に変化し、その後、つる植物で覆われるもその樹冠を突き抜けたものが上部で展葉するとことで樹冠下のつる植物は枯死しし、元の竹林へ戻るのではないかと推測されます。この推測を明らかにするための調査として、プロット内でのタケの発生消長、タケの位置、桿の直径、を追跡しており、つる植物の樹冠下に潜っての作業でほとんど地を張って移動することになります(写真3)。また、実生から発生した1つのクローンを掘り上げ、実際に1年目にどこから発生したのか、2年目はどこに発生したのか、などなど4年分の地下茎の動きを調査しました(写真4)。これは、なかなかの重労働で、丁寧な作業を行わないと地下茎が折れてしまいます。そして、このような掘り上げができるのも今年が最後かもしれません。なぜかといえば、次年はさらに多くの桿が発生し、1つのクローンを一塊として掘り上げるには作業量が膨大になりすぎるからです。

写真3:このなかに一人隠れています
写真4:メロカンナの地下茎の広がり


最後になりましたが、食事はカレー、もしくはカレー風味のものが多く、おいしく頂くことが出来ました。ただ、現地の味付けは薄味のものが多く、醤油とかポン酢があるとさらにおいしく食べることが可能です(写真5)。

3回に渡り徒然なるままに書いてきましたが、また次の機会がありましたら面白いことを紹介したいと思います。では、その時までさようなら~。

写真5:大根とホウレン草を水炊きしたものとスープ

※執筆教員のプロフィールについては、こちら をご覧ください。

 

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