花はワードローブのアイテムか?

諏訪 均

 

ガーデニングは、着こなしを楽しむことに似ているように思います。どのように似ているのか、どこが違っているのか、この場をお借りしてちょっと考えてみました。

Wikiによれば、「ガーデニングとは家庭で行われる造園や園芸の一種。自分が所有する庭やベランダにおいて草花を植栽したり、柵や石畳などで装飾するなどして庭造りを楽しむこと。」とのことですが、まず、両者は他の人からどのように見えるか、が基本として成り立っている。言い換えると、どのようなカテゴリーに入って、その中でうまくできているか、そうでないかを参照できる枠組みがあると思います。もちろん、「私んちの庭は外から見えないし、他の人に見せたいなんて思ってないわ」という方もおられるでしょう。でもきっと、雑誌や実際の花壇などを見て、端的に「こんな庭にしたいわ~」とか、「この色使い、参考になるわ」「この花、こんなにうまく見せられるなんてすごい!」と思われたことがありますよね。これってやっぱり参照できる枠組みがあるということですよね。

もっとも、着こなしは「装い」と言う通り、その人個人の身体を「装う」ものですから、いわゆるパーソナリティや生き方との結びつきがガーデニングより格段に強いと思います。「装う」ことなしには社会的に生きていけないので、当然と言えば当然ですね。

そして次に、参照できる枠組みに関連するのですが、世の中いろいろな服があるなか、現に自分が集めてきた服、すなわちワードロープから、服を選びコーディネートすることが着こなしを楽しむこと、と同じように、自分の手持ちの花、すなわち使うことのできる草花の集まりから、草花を選び庭づくりを楽しむことがガーデニングなのでは、ということです。これはコンテナの寄せ植えを考えるととてもわかりやすい。この場合の手持ちの花は、例えばホームセンターで売っていて作りやすく手軽に買える花苗で、しかもそれなりに大きくなっている。それを色使いや高さ、配置を考えながら、選び実際に植え込む。出来上がったコンテナは既にほとんど完成形。よく似てますよね。それなりに花にも植え方にもはやりすたれがありますし・・

でも普通の庭ではちょっと違います。それは草花を「育てる」、または草花が「育つ」という要素が入ってくること。通常、服は買った時が一番きれいで、時間の経過とともに傷みそして陳腐化していきますが(中には着こむことで出てくるヴィンテージ感などもありますが)、草花は、環境と草花本来の育ち、人の加える手との相互作用で時系列で変化していく。これは着こなしには無い部分ではないでしょうか。

もっとも作る人と着る人が分かれていなかった大昔では、着ることにも自然環境や植物の育ちに制約される部分がもっとあったはずですが、現代では、お店で場合によってはWEBのクリック一つで、自分の身体に一番近いサイズの既製服(正にすでに作られている服)を手に入れることができる。

対してガーデニングは人が恣意的に操作できない「育ち」や「環境」の要素が入ってくる、言い換えると草花本来の育ちと時々の自然環境に対応しながら人が手を加えていく「育てるという技術・技法」が必要で、それが園芸の楽しみの一つとも言えるのではと思います。

また、Wikiによれば造園とは、「庭園などの空間を造ることである。」となっていますが、ガーデニングを行う空間を作ることそのものもガーデニング!ということや、家庭で行う自分が所有する庭造りがガーデニングなら自分じゃなくクライアントの場合や公的空間での行為はどう考えるの?などといったことも着こなしを絡めて考えてみないといけないのですが、そうなると着こなしだけでなく、服飾のデザインや製造、マーケティング、身体論などといった部分まで視野が広がりそうで、とうてい私の手に負えそうにもありません。

そして、こういった分野に取り組んでいるのが淡路景観園芸学校です。視野を広く景観や園芸を研究しているのが当学校の特色だと思います。実は、私はこの3月まで農業改良普及センターと言う農業者からの作物の「育て方」について相談を受ける部署におりました。4月から当学校で主に草花の園芸を担当しているのですが、当学校の研究は幅が広くて奥が深い、面白い、と感じる毎日です。

また、全国唯一の園芸療法課程や生涯学習コースもありますので、興味をもたれた方は、オープンガーデンの見学もできますので、気軽にお越しください。

PAGE TOP