最近の公園ではいわゆるインクルーシブ遊具が相次いで設置されるようになりました。ここでは、それらの経緯と現状について見ていこうと思います。

遊具ではありませんが、ユニバーサルデザインの公園が議論され始めたのは90年代頃からかと思います。大阪の大泉緑地などが有名ですが、この頃はまだ非常にマイナーな存在でした。また、国交省が直轄で整備している国営公園などでも公園のユニバーサル化は比較的早い段階から取り込みがなされました。立川の昭和記念や札幌の滝野すずらんなどが例として挙げられ、遊具での工夫も多数あります。公園のユニバーサル化についての本格的な取り組みはバリアフリー法が制定された2006年以降ですが、義務の対象は園路とトイレ。遊具は義務化から外れているため、園路やトイレの整備は進む一方で、障害のあるこども達に配慮した遊具が身近な公園で導入されることは少ない状況でした。遊具そのものに限って言えば、国営公園などでは以前から導入されていたものの、身近な公園では極めて最近ということになります。

最近の取り組みのきっかけになったのは、やはり東京都の遊具に関するガイドライン。世田谷の砧公園が有名になって以来、全国の公園でインクルーシブと銘打った遊具の整備が進み、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、いまや猫も杓子もといった状況かと思います。ただ、何をもってインクルーシブ遊具というのか定義がなく、言ったモノ勝ちみたいな感じがしないでもありません。現場の職員の方々もその点を悩んでおられます。

これらの課題と言えば、目に見えてわかりやすいことが原因かと思いますが、遊具そのものにばかり目が行くところでしょうか。遊具そのものの仕様に加えて、遊具へのアクセス、駐車場やバリアフリートイレとの近接性などが大変に重要です。しかし、既存のものの改修で、それらをきちんと担保できるところばかりではありません。また、利用者の意見を丁寧に聞き取っているか、聞き取った意見が本当に反映されているかも甚だ怪しいものも少なくありません。今後は、最終的に整備されたものの仕様よりも、どのようにつくりあげていくのかというプロセスが重要になるのかなと思います。あと、つくった後のモニタリングも大事。つくりっぱなし・・ってことにならなければ良いですが。

インクルーシブな公園とは、社会的包摂を支援できる空間。月並みですが、なるべく多くの人が何かしらの関わりを持ちうるように、いかに多様性や機会を確保するか、そういった観点が重要です。公園はそもそもそういったポテンシャルが高い空間ですが、様々なバリアも多いのが現実です。いまのインクルーシブ遊具が一時の流行に終わらず、これらのことを考えるきっかけになれば良いなと思います。



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