筆者は長年マツ林の研究を行っていたのであるが,当研究科の位置する淡路島での竹林拡大の現状を目の当たりにして,竹林に関する研究も淡路景観園芸学校の学生・教員や他大学研究者の協力も得て進めている。そこでこのコラムでは竹林について考えてみることとする。

(↑左:竹優占林)
(↑右:混交林)


わが国における大型のタケはモウソウチク(Phyllostachys pubescens),マダケ(Phyllostachys pubescens),ハチク(Phyllostachys nigra var. henonis)の3種である。これらのタケは有用な植物であり様々な用途に利用されてきた。しかし,1960年代以降,里山の利用が減少し管理水準が低下したことから,隣接する竹林からのタケの侵入が放置された。また,安価な筍や竹材の輸入による国内生産量の激減により竹林自体の利用が減少したことから,竹林の面積拡大が進行した。その結果,里山の種多様性や景観性などに影響を与えるようになった。中でもモウソウチクは外来種でもあることとあいまって,各地で拡大が問題となっている。

現在,竹林の拡大に関する研究は近年増えているのであるが,具体的な管理につなげることが緑環境景観マネジメント研究科の使命でありおもしろさであると考えている。これまで一般市民参加の講座で竹林管理の実践を行い,その結果のモニタリングも継続している。

竹林を適正に管理し,竹林が荒廃・竹やぶ化するのを防ぎ,密度管理として管理伐採を行う必要があるが,竹林すべてを管理するには膨大な時間と費用が必要となる。皆伐すれば,裸地となり防災的な面での危険性や,笹状の小さいタケが密生して,ますます管理がしにくくなる可能性がある。タケの性質を考慮して計画的で効果的な管理を行うことが求められる。そこで竹林の拡大の現状を明らかにし,竹林の生態から管理手法を検討した。

竹林パッチサイズの頻度分布からみると,1974年には1ha未満のパッチが96.1%を占めており小面積の竹林パッチのみだったものが,2000年には1ha未満の竹林パッチの個数は52.4%と減少し,1-2haが24.4%,2-3haのパッチが14.6%,以降最大クラスの7-8haまで1.2ないし2.4%の頻度分布となっており,逆J字型の多数の小面積パッチと少数の大面積パッチから構成されるようになっていた(←図1)。

竹林パッチサイズクラスごとの面積合計の全竹林面積に対する面積比は,1974年には1ha未満の竹林パッチが22.4haと全竹林面積の87.4%を占め,残りの3.2haで22.6%を1-2haのパッチが占めていた(←図2).2000年には1ha未満の竹林パッチの合計面積は23.4haとなっており,1974年とほぼ同様の面積であったが,全竹林面積に占める割合は19.8%と減少していた.1-2,2-3haの竹林パッチが28.7ha,29.8haと全体の24.3%,25.3%を占めていた。3ha未満の竹林パッチが全体の70%を占めているものの3ha以上のパッチ合計面積も36.1haで30%,そのうち6-7haの竹林パッチ合計面積が12.3haで10.4%を占めるに至っていた。

では具体的な竹林管理はというと図3のような3タイプに区分し管理伐採を実施している。これらの成果をもとに行政の竹林管理マニュアルを作成し,地域住民のネットワークによる管理に発展しようとしている.具体的な成果はぜひ淡路島に足を運び実感していただきたい。

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