淡路島はみどり豊かな環境ではありますが、一部の地域は開発に伴う破壊を受け、その修復過程の途上であります。その1つに約350haを誇る大きな淡路島国際公園都市があります。

図1
灘山緑地から大阪湾を俯瞰したところ
(夏期)
図2
灘山緑地から大阪湾を俯瞰したところ
(冬期)


この地区は,関西国際空港の建設の際,海上を埋め立てる土砂の採石場であった場所です。その裸地化された現場を早期緑化し、記憶にも新しい「国際園芸・造園博ジャパンフローラ2000」の会場として復元されました。現在、淡路夢舞台を中心に,国営明石海峡公園(淡路地区),淡路ハイウェイオアシス,淡路交流の翼港から構成されています(図1,2)。

図3 灘山緑地を俯瞰したところ (前部:花木林苑、後部:灘山緑地)

現在,遠景で眺めたとき,その痕跡を思わせる裸地はほとんど見当たりません(図3)。

 しかし,近づいてみると植栽樹が密生状態であったり,当初植栽樹が枯れてしまって疎林状態になっていたりする場所があります。その中でも花木林苑は,四季折々に花木が咲くように計画されていた区画ですが,植栽から8年経過した現在,樹勢が良くない樹木が見受けられるようになってきました。

 当初,32種1,115本の中高木が植栽されていましたが,2005年の調査では597本と約半数が枯死してしまいました。生存率の低い樹種としては,

・コブシ(25.0%,4本生存),
・アキニレ(24.1%,7本生存),
・エゴノキ(30.0%,21本生存),
・モクレン(20.0%,7本生存),
・ライラック(31.9%,112本生存),
・ヒュウガミズキ(4.5%,1本生存)

があげられます。反対に,生存率の高い樹種としては,

・サルスベリ(100%,20本生存),
・ハナミズキ(100%,15本生存),
・ケヤキ(100%,14本生存),
・エノキ(100%,6本生存),
・クヌギ(96.3%,52本生存),
・コナラ(95.2%,20本生存),
・ヤブツバキ(94.4%,17本生存)

となっています(高梨ら,2008)。
 枯死の原因として考えられることは,造成時に充分な有効土層が確保されなかったために根系発達が出来なかったこと,海岸からの距離が約500mと近いため台風のときに潮害による影響を受けること,夏期の降雨量が少ないことなどさまざまな要因があります。

図4
花木林苑内に設置した土壌水分・土中温度計の変化
(2006.4.1~2006.9.15)

図4には,花木林苑に埋設した土壌温度・水分計による変動を示しています。瀬戸内にある淡路島では、7月から9月上旬にかけての水分変動が激しく,植栽樹にとってストレス原因となります。最も近いアメダス測候所である郡家での統計値は,8月の降水量が114.0mmと少ないにも関わらず,日最高気温30℃以上の真夏日は29日に及んでいます。

 このように淡路島という周囲を海で囲まれた島嶼地域での緑化は,気候の点からみて乾燥害や潮害に晒される危険が高く,成立できる植生も貧弱になる傾向があります。淡路に限らず他の地域でもその地域の自然環境に適合したセレクションが行なわれ,適地適種,適正樹形となって落ち着いていきます。

 県民の共有財産である良好な緑地環境を創出することが必要であることはいうまでもありません。植物の生理生態を見極め,郷土に合った健全な生長を示す樹種を可能な限り多様に植栽し,地域アメニティの向上を目指し、良好なみどり環境を後世へ伝えていくことが重要であります。その一翼を担おうと思っている人を緑環境景観マネジメント研究科は待っています。

引用文献:淡路夢舞台花木林苑でのハナミズキ植栽環境の把握及び土壌改良による樹勢回復の可能性(2008)高梨智子・大藪崇司・藤原道郎・山本聡・小野由紀子・上田博文,ランドスケープ研究,71巻5号,873-878

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