私は都市樹木が専門で、樹木が好きです。
そして、生きものも好きです。
特に、昆虫が好きなのです。
「樹木と昆虫は共存して進化してきた」と信じています。
したがって、害虫という概念はありません。
以下は、私のブログの改訂版です。
学校の教員コラム向けの文章に書き換えてみました。
【ケムシのさわりかた(改訂)】
ケムシに触ることは、とても大切です。
緑と共に生きている生きものの命をきちんと感じることと、普通のケムシは毒がないということを知るのが要点ですが、これが毛虫にとっては大変です。
大勢で触ると、普通、ぐったりと疲れて、中には吐いてしまったり、お腹をこわしてしまうケムシがいます。しばらく元気が無く、1時間もすると回復するのが普通ですが、扱い方が悪いと死んでいきます。
イモムシ・ケムシは、やわらかい体をしています。パツパツの皮膚で包まれていますが、もろいものです。
ケムシの多くは、胸にある6本の脚(これが成虫になっても残る)のほか、8本の腹脚や、あるいは2本の尾脚をもっています。
胸にある6本の力はとても弱く、腹脚と尾脚の力が強いのです。
特に尾脚は、小枝につかまる最大の力を持つことが多いです。クスサンのように大型のケムシの力は非常に強く、一般の方はこの尾脚がつかんだだけで「噛まれたー!」と悲鳴を上げます。
脚は体を支えるのが役目なので、しっかりした小枝やざらざらの幹、床のカーペットなど頼りがいのある場所にいる時は、しっかりと踏ん張っていて、無理に手に取ろうとしてはいけません。小枝やカーペットなどは、そういう意味では最悪で、しっかりと踏ん張った腹脚と引っ張ろうとする人間の手によって体のどこかが伸びてしまい、体内の臓器などを傷つけてしまうことになります。
したがいまして、ケムシたち本人のやる気と方向性を大事にして、よく観察し、無理に引っ張ってはなりません。
ケムシたちは、意外とすんなり新しい場所へ移動するので、ほんの少しだけ待ってあげたら、ケムシたちの行きたい方向が分かるようになります。
それでも動こうとしない時、それはかなり嫌な気分になっているはずです。あるいは、触られて少し気持ちが悪くなってしまっているのかもしれない。
そんなときは、お尻をやさしく押してみましょう。
あなたが思っているよりも、やさしく。
一般に、動物の下半身は、無理に触ってはなりません。
写真は、尾脚付近を指で軽く押しているところで、こうして何度も触っていると、だんだん前のほうへ動く気分になってきます。
そして、腹脚の力を考えず、こうして無理して体を持ち上げてはいけません。
きっと、あとで下痢をしてしまいます。
うんちがぽろっとしてなくて、水っぽかったり、ねばっと糸を引くのは、下痢です。相当につらい思いをしたときは、水分だけのときもあります。
さて、ケムシの多くは体中に毛がありますが、長いふさふさとした毛はやわらかく、それより内側(体の表面に近く)には、もう少しだけ強い短い毛があります。
触ろうとしたときにケムシが体をくねくねさせるのは、この少し強い毛を相手にふれさせて、「痛い!」という擬感触を起こさせるためです。
逆に、人間が「痛い!」と錯覚するくらいの力でつかんだ場合、ケムシも相当に痛いはずです。写真のように、指で触るだけでも、やわらかい体は大きくへこむのです。
したがって、ケムシを触る場合は、この短く強い毛が痛くないくらいの力で触るのがお約束です。そうでない人は、ケムシを触る資格はありません。
この短く強い毛が痛くないくらいの力とは、写真のように、長い毛の付近でほんわりとつかむという感じです。
それにしても、ケムシたちの腹脚は、順番にしか動いてくれません。自分自身で移動するにしても、人間がお尻を押すにしても、一対目から順番です。急いで飛ばすことはできません。
そして、ケムシが身を任せてきたら、写真のように二本指でつまんではなりません。短い毛を感じないくらいの微力が必要ですから、当然指でつまむことはできません。
全部の指の力を均等に使い、優しく、ケムシを包み込むようにつかみます。そうすれば、食べたものを吐くことも、お腹を壊してしまうこともありません。