沈 悦

入場者数6000万を突破した上海博を訪れました。当日は40万人の入場者数でしたが、会場が広かったため、想像したような混雑の場面がありませんでした。よい都市・よいライフをスローガンにした今回万博は都市環境と深く関係する「みどり」をどう扱っているのか、興味深いところです。入場してからまもなく目に入ったみどりのパビリオンはサウジアラビア館でした。やはり空中ガーデンのイメージです(写真1)。みどりを楕円状のパビリオンの最上部に挙げている設計は古来からみどりを大切にしてきたイスラム文化の魅力が現れているのではないかと思います。フランス館の内部は外観から得たイメージとは違いました。入館後ちょっと歩くと、中庭が目の前に展開されました(写真2)。庭の中には豊富な植物を用いた垂直方向の「緑の列柱」があり、これらの柱はみどりが都市にとって不可欠な要素であることを世界に伝えると同時に、造形的にも巧妙なリズム感を演出しています。

写真1.サウジアラビア館会館
写真2.フランス館中庭


イギリス館は意外性を見せてくれました。巨大なタンポポの造形でイギリスの創造力を世にアピールしています(写真3)。この「タンポポ」近づくと、様々な植物の種が花弁の先端部に入っていることに気づき、生命の多様性、生命体の美しさがじわじわと伝わってきます(写真4、5)。万博会場中の公園は川添に集中しています。かつて造船場だったこの地にはたくさんの鉄鋼廃材が残されていましたが、公園の整備はこれらの廃材を生かし、鉄鋼材と植物のローマンをつくりだしました。この硬直のラインをもつ鉄のオブジェと風の動きに従う柔軟な湿性植物のとの対比は何より素晴らしい景観を釀出しています(写真6)。

このような色んな視点から「みどり」の存在価値と可能性を示す万博をみて大変満足しました。都市のみどりを量的に増やすことが難しい環境の中、緑の新たな可能性を探る前向きの姿勢をこの万博がもう一度教えてくれたからです。

写真3.イギリス館
写真4.イギリス館(タンポポ花びら先端部、中国科学院昆明植物研究所の協力により集めた植物の種が生命体の美しさを伝えている)


写真5.イギリス館外壁に展示している未来の植物は来館者の注意を引く
写真6.万博会場の中の「後灘公園」、「鉄鋼物」と「植物」の物語を演出している


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