演習で学生達とともに取り組んだまちづくり活動<橋の修景デザイン>を紹介します。

淡路島は、豊かな魚介類に恵まれ、漁業が盛んな地域です。いわゆる「漁村」らしい風景を残したまちが多く存在しています。学校に最も近い町、岩屋地区もその一つです。まちの真ん中を茶間川が流れています。密集した漁村集落にとって川は、風通しも見通しもよい潜在的には街の環境景観空間軸ですが、残念ながら写真のとおり現実はコンクリート3面張り、ゴミが散乱するドブ川です。


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(↑左:茶間川(写真奥が茶間川橋))
(↑右:茶間川橋)


この川の修景計画を演習のテーマとしました。しかし、本格的な河川改修など簡単に出来るわけがありません。何か実行することを目標にしていましたので、学生達といろいろ考えたあげくたどりついたのが橋(茶間川橋)の修景(竹飾り)でした。

茶間川橋は、まちの商店街と川が交差するところに位置し、近くには町役場(統合後は総合事務所)もあるまちの「中心」です。ちょうど2000年の秋であり、「きれいな茶間川で21世紀を迎えよう」を合い言葉に、近隣住民や町役場の若手職員と協働で川掃除をし、そして年末年始の2週間の限定でしたが、とにかく橋の暫定修景を実現しました。

この試みは、1回きりを予定していましたが、地域住民に好評で、町が市に統合するまで毎年、4回ほど行われることになりました。

では、具体的に毎年の修景デザインを紹介します。

<第一回>

学生達自身のデザインと施工です。増え続け困っている竹を近くの県立公園からもらい、高さを変えた筒を並べ、波や表現した素朴さを前面にだしたテザインです。正月の修景にふさわしい和風の趣も表現され、たいへん好評でした。竹筒は終了後、花差しとして希望の住民に配りました。

しかし、このデザインには、かなり重大な問題が含まれていました。それは、子供の安全です。子供の視線からは交差する道路を近づく車が見えないことが実施して判明しました。「安全」は公共空間のデザインでは必須の要件であることを改めて考えさせられました。

↑第一回デザイン


<第二回>

第一回目の反省をふまえ、子供からの見通しを確保したデザインとしました。具体的には、木製のトレリス(板を格子状に組んだ垣根の一種)を用い視界を確保し、アクセントとして竹筒を配置するデザインです。トレリスは、もともと洋風庭園で用いられるものですが、竹やツタとの組み合わせで、和風に仕上げることができました。第二回からは、花づくりに熱心な住民の有志が加わり、彼等とのコラボレーションによる作品です。

↑第二回デザイン


<第三回>

第二回のデザインも好評でしたので、第三回目は、その改良型としました。竹で組んだ和風のトレリスを作成しました。アクセント部分については、竹筒のかわりに木板を使いました。これも花づくりの会の住民有志とのコラボレーションです。

第三回目ともなると、この行事も定着し、住民からは別の橋も修景したらとの要望が寄せられました。

↑第三回デザイン


<第四回>

前年度の要請を受け、隣の橋でも実施する方向で検討に入りましたが、隣の橋は、幹線道路(国道)であり、欄干への修景は難しく実現が危ぶまれましたが、たまたま横に併設されていた歩行者専用橋を対象に実施しました。この許可をもらうにあたり、町役場の建設課の方が関係機関との交渉にあたっていただき実現することができました。小さな橋であっても公共空間の修景には多くの方の協力が必要です。協働の重要性を実感したところです。茶間川橋は、昨年度のデザインに、アクセントの板柱に枯れツタを巻いた改良版です。歩道橋は学生達が単独で担当し、美大出身の学生が中心となり銀と黒に着色したベニヤ板を用いたユニークなデザインものでしたが、住民の方の反応は好評でした。

↑第四回デザイン


先輩から後輩に引き継いだ小さな試みは、住民や町役場の方へと輪を広げ、なにより沿川住民の川の環境景観に対する意識が変化し、ついには橋横の恒久的な緑化広場整備に繋がっていきます。まちづくりは、とにかく実際にやってみることが必要ですね。橋横緑化広場整備の話は、次の機会に報告します。

 

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