今回は、日常の様々な行為を行う空間でのユニバーサルデザインを考えてみたいと思います。

行為空間は移動空間に比べて、もう少しスモールスケール。ある程度、行為が限定される空間のことです。行為が想定できるケースが多いので、空間の設えのみでかなりの工夫ができます。トイレやキッチンなどの水回りが代表的で、ユニバーサルデザインと聞いて、パッと思いつく空間が多いのではないかと思います。これらについては、ノースカロライナ州立大学のロン・メイス先生が提唱されたユニバーサルデザイン7原則が良く知られていて、国や自治体などからガイドライン的なものが出されているほか、熱心に取り組んでいる企業については、専用のサイト(例えばTOTO: https://jp.toto.com/ud/)にて、その理念や具体的な手法までが丁寧に解説されているところもあります。

ここでは重要となる2つの要素をとりあげてみたいと思います。

まず大事なのは広さ。写真1は千葉県柏市にある柏の葉キャンパス駅周辺です。ここは大学や民間企業が多くの社会実験をしている新しい地区ですが、歩道の幅員が大変に広くとられていることがわかります。写真2は、その昔にサンフランシスコで宿泊したホテルのバリアフリールームです。ここも特別なモノと言えば、部屋のドアの開き戸を開閉するための電動スイッチぐらい。その要は、バス・トイレ、ドア前、ベッド周りの面積が広くとられているところにあります。車いすやベビーカーのバリアと言えば段差や傾斜がまず思いつきますが、実は最大の難関は面積。ベビーカーを使用してお店に入り、せまくて困った経験を持つ方も多いのではないでしょうか。どこも限られた面積でやりくりをしていて、この確保に苦労する場合が多いのですが、改修などの際にはがんばって空間的な余白を確保することが重要です。そうすると、車いすやベビーカー利用者が使いやすくなるだけでなく、後からの利用変更の可能性も大きくなります。段差や傾斜であれば後からある程度の変更はできますが、いったんつくった狭い空間は頑張っても広くなりませんからね。

写真1 千葉県柏市 柏の葉キャンパス駅周辺
写真2 ホテルのバリアフリールームの例


次に大事なのは多様さの確保です。写真3は最近リニューアルされた大阪・伊丹空港のゲート近くです。座る椅子やテーブルが1つの種類ではなく、様々なものが備えられているのがわかります。すわるという行為に着目をすると、足が悪い人たちには少し座面が高い椅子が好ましいですが、そればかりになると子供がすわれません。様々な利用の仕方を考え、できる限りすわる高さやすわり方そのものに多様さを持たせることが重要となります。

写真3 大阪伊丹空港ゲート待合ロビー


これらのことと関連が深い公園施設はなんといっても遊具。現在のバリアフリー法では公園の遊具は対象となっていないため、これまではユニバーサル化については一部の取り組みに留まっていました。しかし、最近になって東京都が整備した砧公園がメディアで数多く取り上げられ、遊具に関するガイドラインhttps://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/park/tokyo_kouen/kouen0086.htmlも出されたことから、他の自治体でも整備が進むようになってきました。ここも、大事なのは、遊びの中身やその難易度を多様にし、なるべく、身体の事情などにより、活動が制限されてしまうのを減らしていくこと。あとは、脱一点豪華主義。大規模で、目立った施設を一つつくるよりも、公園での活動や参加のあり方に着目し、それをどう支援していくのかという観点が大事です。写真4では、体幹を保つのが難しいお子さんでも遊ぶことのできるバケット型が一つ含まれたブランコの例を示しています。

 

写真4 バケット型が含まれたブランコの例


このように、ユニバーサルデザインの空間とは、身体に合わせたしつらえや快適さの確保と思いがちですが、そればかりではなく、多様な人の活動の機会をいかに保障するのか、その空間のあり方における工夫なのです。実は、こういった設えの工夫が実際にどのように使われているのかについては正確にわかっていないのが現状です。今後は、既存のユニバーサル空間を再検証するような調査研究が重要かもしれないと考えています。

 

 



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