今回の震災復興支援活動を通して、私は東日本大震災がもたらした物的被害・人的被害の大きさと「人と人のつながり」の大切さを改めて肌で感じたと同時に、誰にでも少しずつでもできることがあるということを学びました。
活動のなかで最も印象的だったことは、プレイパーク・花苗緑化・フラワーアレンジメントなどのイベントを通して参加者のみなさんに満開の笑顔が広がったこと、そして、「もう笑うしかないからね」「がんばるしかないんだよ」という言葉でした。
私は東北に実際に行くまでのテレビの報道からか、被災者は本当につらくて苦しくて悲しみのなかに今もいるというイメージをもち、「現地の方々とどのように接したら良いのだろう、どのような言葉をかけたら良いのだろう」という不安感に駆られていました。しかし、いざ被災地に入り現地の方とお会いしてみると、私が想像していたよりもはるかに明るく、体力的にも元気そうだという印象を受けました。

プレイパーク

活動の初日、亀が森公園でプレイパークの活動をしたときに、プレイリーダーさんやこども達の明るさに正直なところとても驚きました。もしかすると震災で友達が亡くなったかもしれない子達なのに、それを全く感じさせない明るさでした。私たちが学校から持って行った水鉄砲やシャボン玉はこども達に大人気で、夢中になって本当に楽しそうに遊び回っているこども達を見ていると、被災地のこどもも被災地以外のこどもも、何も違うところはないように感じられました。しかし、こども達は何が起こったのかまだ理解しきれていないのかもしれないとも思いました。

活動2日目に訪れた平成の森の仮設住宅では、お年寄りに対してのサポートは充実しているものの、こども達への支援がまだまだ少ない現状があるということを伺いました。プレイパークで活き活きと遊ぶこども達の様子を見て、こどもにとって思いっきり遊ぶ場があることの重要性を感じたことから、もっとこども達に対するさまざまな支援をしていくことが必要であると思いました。また、緑と花の分野からもこども達向けの体験など提案できるのではないかと感じました。

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フラワーアレンジメント

活動2日目に平成の森地区で私が担当したフラワーアレンジメントの体験には、支援員さん4名を含めて全員で15名の方が参加されました。参加者さんに使っていただく花の仕分けをした後、余った花は簡易な花瓶に挿して部屋のあちらこちらに飾り、華やかな雰囲気を出しました。そのような雰囲気作りをすることが、部屋に入ったときの第一印象としてとても大切なことなのではないかと感じました。

参加されたみなさんは、鎌田さんが準備してくださった花を使って、夢中になって花のお弁当箱作りに没頭されていました。本来、花のお弁当箱は容器に入っているスポンジが見えなくなるように、花の茎を短く切って敷きつめていく作業によって進んでいくのが一般的ですが、参加された方のほとんどが生け花のように茎を長く残したままスポンジに挿していかれていました。しかし、今回の目的は「夢中になれる時間を創出すること」であったのに加え、参加されたみなさんの表情を見ると本当に花に触れてうれしそうで楽しそうだったので、敢えて一般的な手法にはあまり触れないことにしました。このことから、どのようなときもマニュアル通りに進めるのではなく、その場の状況によって臨機応変に対応することの大切さを改めて感じました。

花のお弁当箱作りの体験が終わった後、自由にお話をできる時間を設けました。みなさん、自分自身で作ったお弁当箱をうれしそうに見ておられ、また、他の方が作った作品に対しても感想を述べておられたりと、その小さい場でたくさんの会話が生まれていました。その中で印象的だったのは、「やっとこういうことができた」という参加者さんの言葉です。やはり、したくてもできないことがたくさんあって、でもしたいことを誰に言うこともできなくて、誰ともその気持ちを共有できていない現状があるのだと感じました。

また、最初は花の話をされていても、だんだん震災の話や今の生活の苦労話に話題がシフトしてきて、その話から抜け出せなくなってしまうことがありました。しかし、それは決して悪いことではないと私は思いました。それは、被災された方々はそれぞれ自分の中に苦しみや悲しみを溜め込んでいて、それらを表に出してはいけないと我慢してしまい込んでいるように感じたからです。きっと「辛いのは自分だけじゃないんだから弱音を吐かずにがんばらないと」と思っておられるのでしょう。だからこそ、その気持ちを吐き出す場があることも大切ではないかと思うのです。確かに、みんなでがんばっていこうという気持ちをそれぞれが持つことが復興のために必要不可欠です。しかし、苦しい気持ちをみんなで共有することもよりつながりの強いコミュニティを作るために重要なことなのではないでしょうか。今回の活動を通してそのような場を提供できたという点でも、このプログラムが被災地の方にとって意義があったと言えるのではないかと思います。

また、この平成の森地区のフラワーアレンジメントの活動では、参加者の中に近所に住まわれている民生委員さんもいらっしゃり、活動の最後には「このような活動を自分たちでも広げていきたい」という声を聞かせていただくことができたので、地域の方が主体になって活動の幅が広がっていくことも今後期待されます。そのような動きの中でもっと多くの方が自分のしたいことを発信し、できるようになっていくことが理想的だと思います。

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仮設住宅調査

活動2日目のフラワーアレンジメントのプログラム終了後、仮設住宅調査班と合流して平成の森地区の調査を行いました。そのなかで、南三陸町歌津支所町民福祉課長の千葉和之さんに、仮設住宅の現状と今後の展望についてお話を伺うことができました。

ボランティアについては、震災が起こってからしばらくはトイレの水を調達するためにため池から避難所に水を引くボランティアや支援物資を提供するボランティアが多かったのに対し、仮設住宅ができてからは、買い物の移動をサポートするボランティアや思い出の写真を集めるボランティア、心のケアをするボランティアが多くなったということを教えてくださいました。このことから、被災地の方がボランティアに求める内容は多岐にわたっているということが読み取れます。そのニーズをどのようにしたら把握して実際に動くことができるのかというのが今後の課題であるように思いました。

また、支援員さんは仮設住宅に住む方の困りごとの相談に乗ったり、訪問して孤独死防止の活動をされているということを教えていただいたのですが、支援員さんも自らが被災者であるため、その負担は大きく、支援者さん側が発散できる場がない現状があるように思います。そのことから、支援者さんに対する支援というものも必要なのではないかと思いました。

 

まとめ

復興はさまざまな立場の人が関って協働で取り組まなければ進めていくことができないため、復興には人と人のつながりが必要不可欠であり、つながりを持つことからすべてが始まるのではないかと思います。しかし、被災地の方々はその認識があっても、どのようにしたらつながりを持つことができるのかという疑問を抱えておられました。そこで、私たち外側の人間ができることは、「つながりを持つためのきっかけづくり」だと思います。今回の私たちの活動は花と緑を主に用いたものでしたが、それ以外の分野においてもそれぞれの支援の仕方、関わり方があるのだと思います。私は、「被災地の方の役に立たないと!」と意気込んで今回の活動に取り組みましたが、被災地の方からは、「ここに来てくれるだけで本当にうれしい」というお声をいただきました。今回の活動を通して、「継続的に」「長期的に」というキーワードの意味を身をもって実感しました。これからは、自分の専門とする花・緑の分野で経験を積むと同時に、無理をせず、でも被災地のことを決して忘れずにその時々で自分自身に何ができるのかについて考えて行動していきたいと思います。

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