緑地計画に携わるにあたり、もちろん植物や生態系の知識は必須である。

一方で、それだけ見ていても、たとえば緑地保全が経済的な理由で住宅地や商業地の開発に押されがちなように、負け戦になりがちである。

 

「みどりを守れ」は想いだけでは成り立たない。

 

みどりの意義を否定しているわけでは決してない。特に影響が顕在化してきている気候変動に対応することを考えれば、緑地の意義は言うまでもなく大きい。COVID-19蔓延という事態においても、身近に緑地があることに救われた人も少なくないだろう。

 

大事なのは、広い視野をもち、みどりの持ついろいろな側面と繋げることだと考えている。

つまり、社会の情勢を敏感に感じ取り、現在さらには将来的にどのような課題に取り組まなければいけないのかを察知し、それに対して持っている知識を総動員してみどりは何ができるのかを考え、戦略的に提案へ持っていくのである。

 

こうした方向性でいこうとすると、自身の趣味が思わぬところで生きてくる。

たとえば多文化共生ガーデンの研究や推進はそういったところから生まれてきた。自分は多趣味な方であると思うが、そのなかに語学の勉強や海外旅行、日本語教師ボランティアといった国際的なものがある。帰国子女でもなければ、飛行機にも成人するまで乗ったことがないくらいであったので、もとより国際的であるわけではないが、学生時代の海外でのサマースクールや研究調査を通じて、大変でありつつも刺激的な経験にはまることとなった。

 

必死に英語やドイツ語を勉強して、欧州などで様々な地に入り込んで闘ううちに、マイノリティとして社会にいることの困難さを実感した。発展途上国での暮らしに比べれば随分イージーモードであったとは思うが、それでも毎日生きていくだけでも母国にいるよりも5倍大変なのである。

 

そこで出会ったのがオーストリア・グラーツの多文化共生ガーデン(Interkultureller Garten)であった。ドイツ語教師をしている女性がシュタイヤーマルク州から農地を借りて、野菜や花を栽培したり、地域の資材(動物の毛など)を使って窯を作り一緒に料理したり、アート作品を作ったりということを通じて、生徒に言語だけではなく気候風土や生態系、文化も教える取り組みをしていたのである。

 

グラーツの農地活用型多文化共生ガーデン
動物の毛も混ぜて作られた窯


日本で少子高齢化が進み、従来レベルの社会を支えるためには外国人との共生が必要との議論が盛んになりだしていた当時、「これだ!」と思い、多文化共生ガーデンの意義や運営方法に関する研究を始めたのである。直感であったが、実証実験のために民間財団から助成金をいただけたり、専門誌から寄稿を求められたり、卒論テーマにしてくれる学生が現れたりなど、察知したものは外していなかったのではと思っている。

 

私はクラシックからJ-POPまで幅広く音楽が好きであり(演奏もする)、また幼少期からゲームとマンガで育っている。近年はヨガスタジオにも足繁く通い、twitterやInstagram等での友人との交流も欠かさない。旅行も大好きで一人でもふらふらと出かけてしまう。コピーライター養成講座にも通ったことがあるし、最近は語学の対象をイタリア語にも広げてみた。以上のような趣味や活動は本業とは一見関係なさそうであるが、こうしたところで得た情報や感じた社会の空気感が、これからの緑地計画を考えるうえで活きてくることがある。

 

持ちうる時間の全てをみどりの勉強に費やして専門家になる道もあるし、ここまで趣味に時間を使うよりは研究にもっと時間を費やすべきではと時に思うこともなくはないが、こういった異端者的な研究者・教育者も新たな視点を生み出すという点でいてもよいのではと思うことにしている。それこそが多様性が必要たる所以であろう。

 

他の分野との調整を図り、計画を作りあげることもみどり分野の重要な役割のひとつともよく言われている。みどり以外のこともわからないと、調整は難しい。

 

これからみどり分野に関わる方にも、是非多様な視点を取り入れていただきたい。また、植物や生態系をこれまで学んでいない方にも尻込みすることなく、自分ならではの強みを活かすのだという気概とともに、分野に入ってきていただきたい。

 

 

 


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