みなさんは、「ひと粒」と聞いて何か思い出すことがありますか?

「ひとつぶ300メートル」

某食品メーカーのおもちゃ付きお菓子のキャッチコピーです。このお菓子のロゴマークと一緒に、この言葉を思い出す方も多いと思います。実際に、このお菓子の“ひとつぶ”には、300mを走ることができるエネルギー約16.5 kcalが含まれているそうです。このエネルギーは、体重60㎏の方が約5分間、除草する時に必要なカロリーにもなります。

園芸活動の前の“ひとつぶ”。力になりそうです。

 

「ひとつぶの種」

この言葉は、園芸療法のこころを伝え続けてくださったグロッセ世津子先生の園芸療法士へのメッセージであると思っています。

「私たちは、自分なりの花を咲かせる情報を生まれながらに授かっている『ひとつぶの種』。可能性は無限で虹色に輝いています」。更に、「“私サイズの園芸療法”は、植物のある環境で、生活園芸をとおし、『ひとつぶの種』という存在のひとりひとりに秘められた情報の開花を促すような『場作り』です。こうした場作りをデザイン・提案することを、私の仕事としています」

グロッセ世津子先生からいただいた「ひとつぶの種」という言葉は、園芸療法の対象者に対して、そして、私たち園芸療法士に対して向けられた言葉。心に刻み、これからも歩んでいきたいと思います。

*グロッセ世津子website「園芸療法って何?」   

http://www.grosse.co.jp/setsuko/horticultural.html より

 

「ひと粒の米」

最後にお話を1つ紹介します。

もう何年も前になりますが、わたしが病院で園芸療法士として働いていた時、Aさんと毎年ペットボトル稲づくりをしていました。Aさんは、入院なさって何年か経ち、お住まいが遠方のため、奥様は頻回に病院へいらっしゃることができません。

Aさんとのペットボトル稲づくりは、前年Aさんが栽培したイネの種籾を5月に芽出しし、イチゴパックに種まき、そして、田植えならぬペットボトル容器に苗の植え替え。その後、毎週、イネの生長を見守り、8月には穂が出て、小さな花が咲き一安心。10月にはいよいよ稲刈り。その後は、イネを干し、お茶碗を使って脱穀、すり鉢で籾をすり、玄米にします。玄米は何粒できたのでしょうか? 毎年、小さなガラス瓶に一杯になる量です。その玄米をいつも私たちのサポートをしてくださるAさんの担当理学療法士さんが奥様に渡してくださいます。

ある年、奥様から手紙をいただきました。

「ごはんを炊く時、Aさんが作った玄米を一粒入れ、離れているAさんをおもっています」

Aさんは、言葉を発することはできないのですが、イネの生長をご覧になると、毎回、眼を大きくして驚きの表情を示されます。時には、涙を流されます。そんなAさんと奥様をつなぐ「ひと粒の米」。

Aさんとのペットボトル稲づくりの収穫を終えると、その年の実りに感謝し、くる年も変わらぬ一年であることを祈りました。

Aさんが遺した種籾でペットボトル稲づくり

 

 


 

 

 

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