権 孝姃

淡路キャンパスには季節ごとにさまざまなお花が咲き、私たちを楽しませてくれますが、とくに、春になると一段とさまざまなお花が咲き乱れます。そのなかに、ヤマボウシ(Cornus kousa)とハナミズキ (C. florida) も春を彩る庭木として、よく見かけられます。
この二つの種の植物は、同じくミズキ科ミズキ属の植物で、ハナミズキの別の名前がアメリカヤマボウシであることからも推測できるように、近縁のものですが、原産地が違うものです。
まず、ヤマボウシからみてみると、原産地は日本、韓国、中国であり、6~7月ごろになると写真のような白いお花が樹の表面を覆うように咲きます。この花弁のようにみえている白いものは、正確には花弁ではなく、総苞片といって花弁とがくの中間的なものです。

 


そして、ハナミズキは、アメリカ東部の暖地やメキシコ北東部の原産で、ヤマボウシよりはやや早く4~5月ごろにお花が咲きます。ハナミズキとヤマボウシの花の写真を比べてみると、同じく4枚の総苞片があり、かなり似ていますが、細かく観察すると総苞片の先がヤマボウシのほうは尖がっていることに対して、ハナミズキのほうはへこんでいることがわかります。

 

 

そこで、おもしろいのは実です。花と葉は似ているヤマボウシとハナミズキでありますが、実はまったく違う形をしています。
8~9月に実が熟するヤマボウシは、球形のオレンジ色をおびており、食べてみると甘くておいしいです。

 

 

10月ごろ熟するハナミズキの実は、鮮やかな紅色をしており、楕円形の小さい実がいくつか集まっています。

 

どうしてこれほど実が違うのでしょうか?その理由は種子の散布の仕方にあるともいわれます。
東北アジアを原産とするヤマボウシはサルが実を捕食してくれることを期待して進化してきたとも考えられます。視覚的にサルなどの霊長類は赤からオレンジ色をよく区別できるようです。これは、赤からオレンジ色をした実をよく食べるからともいわれますが、まさしく、ヤマボウシの実はオレンジ系の赤色で、甘くて、サルがつかみやすい丸い形をしています。
一方、鳥類が好きな色は赤色といわれます。だから、お庭に赤色の小さい実のなる木を植えるとトリがたくさん飛んでくるようです。ハナミズキは捕食者として鳥類をねらっているため、鳥類が好きな鮮やかな紅色で、くちばしでつまみやすい形の実をしていると思われます。
このように近縁であっても、それぞれの生き方をしている植物をみると何となく神秘的だとも感じます。さまざまな植物をよく観察することで、自然の面白いお話はたくさん発見することができます。

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