大藪 崇司

最近、半乾燥地といわれるところに出かけ、実際に植林したり、植林された森林の調査をしたりすることが増えてきた。この草稿も中国内モンゴル自治区の牧民の家で裸電球の下、書いている。時差は、GMT+8時間なので日本より1時間遅く、今が夜10時だとすると日本では夜11時である。中国へは、ここ5年ほど毎年夏に1回、年によっては冬にも1回、砂漠の調査に来ている。そんなに中国好きであったわけでもないのだが、何といったらいいのか言葉にし難いのであるが、原風景というか原体験というかカオスが堪らない魅力的に感じる。さて、砂漠といってもサハラ砂漠のような砂ばかりの乾いた土地ではなく、草原も湿地もあり植物も動物も多く見られる。今も目の前を、見知らぬ虫が這っているし、頭上では裸電球のまわりを蛾が飛んでいる。多分、日本の街中よりはよほど生物の多様性が豊かであるといってもよいのではないだろうか。まさしく‘東京砂漠’いや、緑の少なさと人の熱さからすれば関西のほうが暑いのである。

この地域では、これまでODAや企業スポンサーによる植林活動が展開されてきたことがあるが、今、軌道に乗せようとしているのは、住民が出資金を出し合い植林活動を行う合弁会社の経営である。つまり、植林業を核として、牧畜業・農業を有機的に組み合わせることで利益を出しながら造林面積を増やそうとする試みである。しかし、大量の植林は、当然、大量の水を使うことになり、造林面積が増えれば、地下水位の低下や河川を流下する水量が減少する可能性も否定できない。ただ、沿岸部と内陸部の貧富の差は、ここ10年で想像を絶するほどまでに拡大しており、内陸部に住む人たちもより豊かになろうと必死に牧畜業で稼ぎを増やそうとした結果、ますます土地の荒廃が進んでしまうという悪循環を引き起こしている。半乾燥地のような土地は、自然の復元力と緩衝力が脆弱なため、羊やヤギなどの放牧圧により一度自然が壊されてしまうと元に戻るのに数十年、もしくはもう戻らないかもしれないぐらいのダメージを被ることになる。そのようなデフレスパイラルを断ち切るために、適正な林分の管理、樹木のマネジメントを住民に伝えることが出来れば幸いとの思いから協力を始めた。そのような勉強がしたい人、砂漠化の実際がみて見たいと思う人(ただし、夏なのに風呂・シャワー無し、砂まみれの埃まみれのことも(>_<)・・・が、中華はおいしい)がいたら、是非takashi_oyabuアトawaji.ac.jpまで(アトは@に変換)コメントをいただければと思う。一緒にがんばりましょう!ちなみに自費渡航となりますm(__)m。

 

水たまりで放牧中の牛もひと息
遠くまで植えられた6,000本のポプラ


※執筆教員のプロフィールについては、こちら をご覧ください。

PAGE TOP