緊急事態宣言が明けたので久々に京都の嵐山に行った。嵐山は観光客が少なくショップのシャッターも多くが閉まり、こんなに落ち着いた嵐山を久しく見た。

嵐山界隈の疎な状況


近年インバウンドという名目のもとに諸外国から観光客が大挙して嵐山に押し寄せてきていたが、このコロナ禍により入出国が難しくなり、嵐山、京都、いや全国各地の観光地を含め観光客が減っている。観光客が減ったということで落着いて庭園鑑賞できる機会が訪れた好機ともいえる。

 

まず、訪れたのは天龍寺庭園である。天龍寺庭園は、室町時代前期に夢窓国師が作庭した池泉回遊式庭園であり、日本を代表する庭園の一つとして1994年にユネスコ世界文化遺産にも登録されている。天龍寺庭園は亀山・嵐山を借景として曹源池を配し、その向こうに龍門の滝と呼ばれる滝組がある。これは、ひたすら修行を繰り返すという禅の理念を石組で表したもので「登竜門」にちなんだ故事にみたて鯉が滝を登り龍へと変化する瞬間を表現した鯉魚石と呼ばれる役石を配している。その庭園を正面には木製のベンチがあるのだが、これもすべて空席であった。

大方丈前のベンチは無人


ゆっくりとベンチに腰をかけ一人庭園鑑賞するのは実に優雅な時間の過ごし方であると思えた瞬間であった。

 

午後は嵐電に乗り帷子ノ辻で乗り換え、龍安寺駅で下車して龍安寺に向かった。ちょうど雨が降ってきて龍安寺に着いた頃には結構な降り様になっていた。

龍安寺は室町時代後期を代表する寺院であり、方丈南庭の石庭は江戸時代に枯山水庭園の一つである。この庭園は、見る者の想像力を掻き立ててくれる。石庭は15個の石を置きながらも14個の石しか見えないような配置をしたり、石組を黄金比で配置していたり、石の一つに「小太郎」「清(彦)二郎」という名が刻まれており作者名ではと推測されたり、と見る者はいろいろと考えるが答えは見つからない。この庭園にも観光客はほとんど居らずゆっくりと鑑賞することができた。

ソーシャルディスタンスの確保(2021年)


前回訪れたときは縁側に座る人とその後ろに立つ人と二重三重に人だかりができていた。

方丈が密な時(2006年)


 

京都で育った著者であるが30年前にはこのように多くの観光客が訪れる場所ではなかった。外国からの観光客誘致の政策がとられインバウンドという名のもとに観光リソースを消費するような形で発展が起こった。コロナ禍で世界的な移動の粛清により元の落ち着いた嵐山に戻った。このような事態が起こるとは夢にも思っていなかったであろうが、観光という資源に頼る施策を考えるきっかけとしては充分な機会であったと思う。徐々にワクチンの接種も拡大してきており数年かけで緩やかな世界経済の回復が起こる中、この状況を安全に楽しむチャンスを逃さないでほしいと思う。

 

 

 

 



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