平田 富士男
 私とB級グルメ

バブルの頃、ずいぶん超高級グルメがもてはやされましたが、今や時代は「右肩下がり」。もてはやされるのは、うってかわって「B級グルメ」となりました。

もともとそのような高級なものには縁のない私は、当時からもっぱら「安くて、おいしいもの」を探し歩くのが好きだったのですが、当時転勤族だった私が、その転勤先でいろいろな「安くて、おいしいもの」に出会えたことは、しんどくて、負担の大きい転勤生活のなかでも「ちょっとした幸せ」となっていました。

そんななかで出会った各地のB級グルメを、個人的にブログで紹介していたら、突然朝日新聞社の取材を受けることとなり、こんな記事に載ったりもしました。
     ↓
http://www.asahi.com/kansai/travel/kansaiisan/OSK200910070033.html

昨今のB級グルメブーム

そんななか、さきほど書いたような時代を反映してか、今やB級グルメは「ブーム」と言われるほどのものにもなり、「B級グルメ選手権(B-1グランプリ)」なるものまで現れました。

この選手権でグランプリを取ったら、その売上と地元への経済効果は、20億円にも達するとの声もあり、各地で地域活性化の起爆剤として「B級グルメ」への注目が高まっています。

そのようななかこのB級グルメブームを活用しようとB級グルメを新たに創り出そうとしている活動もテレビで紹介されたりしています。

しかし、私はこのような活動に違和感を感じざるを得ません。私にとっては、B級グルメを今から創るのは「邪道」なのです。

B級グルメは、創り出すものではなく、発掘するものである

それは、私が「B級グルメ」とは新たに創り出すものではなく、「地域の人々がその地域の風土に根ざした暮らしのなかで営々とあたためてきたその地域独特の身近な食べ物」であると思っているからです。

だから、きのう・今日で創った「ポッと出」の食べ物は、いくら安くておいしくても私のなかでは「B級グルメ」とは言えません。

それは、地域の生活なかで、地域の人々の長期間にわたる評価を経てないからです。

したがって、B級グルメで地域おこしをしようとするのなら、B級グルメを創作するのではなく、「地域に伝わっていながら、まだ注目されていなかったものを発掘する」べきなのです。

風土に根ざしたB級グルメとは?

さて、兵庫県姫路市で生まれ、その後東京、高松、東京、広島(庄原)、名古屋、東京、長野、東京、丸亀、そして今の神戸・淡路へと転々とした私にとってのB級グルメはどんなものでしょう。

ここで、そのいったんをそっと?お教えしましょう。

 姫路では・・・新宮町に本社のあるブンセンの「アラ!」
 高松・丸亀・・・「醤油豆」
 広島(庄原)・・・「わに料理」
 名古屋・・・「なまずの蒲焼き」
 長野・・・「じこぼう」
となります。

では、これらのB級グルメとその地域の風土との関係は?ということになりますが、それぞれを話し出すと長くなってしまいますが、簡単にお話しますと、
「アラ!」は揖保川の水を活かして醤油造りをしていた会社(寛永通宝の「文銭(ぶんせん)」に由来)が社業転換として佃煮製造を戦後はじめたもの。ちなみに、揖保川ぞいの龍野は西の醤油どころとして有名。(最も有名なブランドは「東マル」)
「醤油豆」は、水田の裏作として作られる「そらまめ」を、これも讃岐の地醤油、小豆島産の醤油で甘辛く煮込んだもの。
「わに料理」は「鮫料理」のこと。中国山地の山あいの地域で、冷蔵庫のない時代、唯一海の魚を生で食べられるのが、陸揚げしても長期間身が腐らない鮫だった。
「なまずの蒲焼き」は、名古屋の西の地域で揖斐、長良、木曽の三川が流れる地域で食される料理。海に近いが遠浅で良港のなかったこの地域は、海の魚よりうなぎ、なまず、鯉といった川魚料理を昔から食していた。
「じこぼう」とは、正式和名「ハナイグチ」というキノコ。カラマツ林にはえるキノコで、カラマツ林が多い信州では人気のキノコ。
というふうに、それぞれの地域の風土に根ざした食べ物なのです。

これらは、「B-1グランプリ」を制するような華やかしい食べ物ではないのですが、その地域の人は誰でも知っている、本当のその地域のB級グルメだと私は思っているのです。

食べ物は、地域でとれる植物や動物を食材としていますから、自ずとその風土を反映するものですが、その食材を調理、加工、保存する方法もその地域の気候や暮らしぶりなどの風土を反映しています。

ですから、B級グルメはまさしくその地域の風土の鏡。ほんとうのB級グルメとは、見た目の奇抜さなどではなく、そのような地域の風土に根ざしたものであるべきだし、そのようなものこそがB級グルメとして注目されてほしいのです。そして、逆にそこからその地域の風土に思いを巡らせてほしいのです。

そんなものも含め、私のなかの「B級グルメ」を以下のページでご紹介していますので、よろしければご覧ください。

https://blogs.yahoo.co.jp/gardencity21

このページのトップから「私の愛するB級なもの」「B級グルメと風土」のコーナーをご覧ください。

※執筆教員のプロフィールについては、こちら をご覧ください。

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