「鑑賞園芸研究室からいい匂いがする」とよく言われます。
日によって、ちがう匂いです。
美味しい匂いの日もあれば、お花の匂いの日もあります。森の匂いの日もあります。
いい匂いがする日は入れ替わり立ち替わりいろんな人が研究室に訪れます。
なぜいい匂いがするのか?というと、「園芸」の研究室だからです。
「園芸」と言えば、まず「ガーデニング」を思い浮かべる人が多いと思いますが、実は「園芸」という言葉はとても幅広い意味で使用されます。
「園芸」と検索すると、「園芸(えんげい)とは、野菜(蔬菜)、果樹、庭木、花卉(かき)などの栽培またはそのための技術」と出てきます。田んぼでお米を育てるのも、畑で野菜を育てるのも、温室でイチゴを育てるのも、庭に木を植えるのも、花壇に花を植えるのもすべて「園芸」です。つまり、「農業」も「造園」も「ガーデニング」もすべて「園芸のうち」とも言えます。
また、「園芸」はその先にかならず何らかの形での「目的」があります。
「食糧の供給のため」米や野菜や果樹を栽培し、「身にまとうため」綿や麻を栽培し、染料となる草木を利用して素敵な色に染めます。「景観を楽しむため」あるいは「富と権力を示すため」樹木を植えて庭園をつくり、花壇に花を植え、「薬を作るため」薬草を栽培し、「心を豊かにするため」花を飾り、大切な人に花を贈ります。神にサカキやシキビの枝を捧げ、結婚式にはブーケで愛と幸せを願い、葬儀には供花で弔意を示します。
こうして、「園芸」はヒトの生活と心をささえています。
では、この研究室ではこれを実践しなければ。
ヤマモモの実がなればシロップ漬けにして炭酸割りジュースにし、
クロモジの枝が手に入れば水蒸気蒸留法を用いてハーブウォーターを抽出しアロマスプレーを作り、
アイの生葉が手に入れば、たたき染めで手ぬぐいやエコバッグを染め、
ユーカリやコニファーやミモザの枝があれば、リースづくりをし、
バジルが収穫できれば美味しい料理を楽しみます。
学校のフィールドには、多種多様な植物が植えられています。
余すところなく使い倒したい!という野望をもちつつ、授業や会議の合間にすこしづつ実践・・・。キャンパスには、学生が植物を見て触れて学ぶために、ありとあらゆる植物が植えられています。葉っぱがおすすめの植物、きれいな花を楽しみたい植物、花の後の実が素晴らしい植物、香りを楽しむ植物、紅葉がキレイな植物、シードヘッドがキレイな植物・・・季節ごとのお楽しみは一年中尽きることがなく、やりたいことは増える一方です。
幸い、研究室で料理をしても、水蒸気蒸留をしても、染め物をしても、いまのところ誰にも怒られていません。それをいいことに、これからも「園芸」を楽しもうと思っています。
鑑賞園芸研究室からいい匂いがする日は、どうぞお立ち寄りください。もしかしたら何か良いことがあるかもしれません。
